皇帝より鬼神になりたい香の魔道士

蘇 陶華

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紫鳳の真実の目覚め

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ほんの光が走った瞬間だった、紫鳳と瑠璃光が喪音に戻ったのは。舞い上がる香。瑠璃光は、術を使ったが、何もかも解決するには、時間が足りなかった。術で、紫鳳を一緒に守るには、間に合わなかった。尚更、その瞬間に、元に戻った瑠璃光を狙い、鶴白は、紫鳳を狙い、巨大な剣を振りかざしてきたのだ。やるべき事が、多かった。紫鳳は、瑠璃光と一緒に大陸に、転移できなかった。香が舞い上がる中で、紫鳳は、変化し、光となって、飛び出した。阿と吽を守りながら、体の中で、心臓が大きく波打っていた。久しぶりに聞く、自分の鼓動に、紫鳳は、生きている事を実感した。幾つもの香が、紫鳳を強くしていた。舞い上がる香と炎が。紫鳳を強くした。巨大な翼が、天に届き、炎と同化した。体の中で、十二神の力が、爆発している様だった。炎の鳥神となった紫鳳を、鶴白は、怯まず追いかけてきた。
「ち!」
振り向きながら、紫鳳は、舌打ちした。鶴白は、怯まない。本来であれば瑠璃光を生捕りにしたかったが、瞬間、逃げられてしまった。であれば、この国の神々の魄を奪った紫鳳を何としても、倒したかった。気迫が違う。鶴白の背中からは、幾つもの腕が伸び、各々には、剣が握られていた。
「しつこい!」
紫鳳は、可能であれば、戦うことで、力を失う事は避けたかった。大元の魔導士から、離れてしまった今、召喚され戻るまで、消えてしまう危険性もある。この場で、何とかして、生き残り、消滅は避けたい。
「紫鳳!」
吽が叫んだ。
「私達が、防ぐから、逃げて!」
「そうだ、紫鳳!瑠璃光との契約が切れたら、自由になるんだろう!何としても、力は、使い果たすな!」
阿は、爆発で、負傷していた。喉を炎で、焼き切ってしまったのか、掠れた声だった。自由になって、何をする?以前、瑠璃光に言われた言葉が、頭を駆け巡った。
「自由になって、知りたいんだ!」
紫鳳は、叫んだ。だが、被せるように、瑠璃光に怒鳴られた。いつも、静かな瑠璃光が、顔色を変えて怒鳴った。あまり見ない表情に、紫鳳は、怯んだ。
「自分の出目を知ってどうする?今更、戻れるのか?」
最もな意見だった。自分は、捨てられて、死にかけていた。自分を捨てるような親を知ってどうする?紫鳳は、自問した。今更、帰る所はない。むしろ帰る場所は。。。阿は、喉がう開けていた。吽は、顔を怪我し、手当が必要だ。変わらず、鶴白の勢いは、激しく、数多の腕の剣で、紫鳳を切り付けようとしていた。
「そう、このままでは。。。」
青龍の剣は、自分を守ってくれている。だが、怯まず、掛かってくる
鶴白を倒さなければ終わらない。紫峰は、振り返り、翼を大きく開いた。黄金色に輝く翼は、開くと太陽の様にも、見えた。
「う。。」
一瞬、鶴白は、見惚れてしまった。紫鳳が、後光を背に立ってる様に見えたからだ。その開いた翼は、後ろに大きくのけぞると同時に、金の輪を放った。金の輪は、幾重にも重なり、中には、たくさんの梵字で、満ちていた。縦にも横にも、重なりながら、鶴白を包んだ。
「悪いけど、これで、終わりな」
金の輪は、次第に小さくなり、鶴白の体を下界へと落としていった。全ての力を出し切った。
「紫鳳?」
吽が、紫鳳を見上げると、半ば、気を失った姿が見えた。翼は、だらりと下がり、今まで、気が付かなかったが、先ほどの爆撃の衝撃で、あちこち傷だらけになっていた。青龍の剣だけが、何とか、紫鳳を支えようと、効力で、体を保持していた。
「早く、地上へ。。」
吽に導かれ、紫鳳の体は、地上へと降り立っていった。ようやく、地上に触れた瞬間、青龍の剣は、折れてしまった。まるで、主を守りきったかの様に。
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