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才能を受け継ぐ者
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「結局、才能なかったんじゃん」
あまり、責めたくはない。でも、実際、彼は、相方の才能に頼ってきた。
そして、自分と一緒にいるのも、雰囲気や声があの人に似ているから。
「ねぇ・・・聞いているの?寧大」
すっかり、落ちぶれてしまった。
音夢の父親の力で、この世界にしがみついている。
何となく、逢って、ご飯食べて、夜を過ごして、ずるずると生活していた。
もう、別れ時かも。
音夢は、思っていた。
寧大。
シーイが去ってから、抜け殻の様だった。
確かに、アイディアとか、優れていたし、シーイが居なくなってからは、寧大に魅かれていたのも事実だし、寧大自身も、自分に魅かれていたと思っていた。
結局は、シーイの身代わり。
音夢も、大学生活を続ける様になり、歌の世界で、ボチボチ売れ始めていた。
「身辺、整理しろ」
父親からは、そう言われていた。
ダメダメな寧大を見て、今日にも、別れを切り出そうと思っていた。
「結局、あなたは、シーイの才能にあやかっていただけなのよ」
寧大を深く傷つけると思ったが、言わずに居られなかった。
「そうだよな・・・俺は、いつまで経っても、ダメなんだよな」
寧大が、否定しなかった事に、驚いた。
「あいつには、悪い事したなぁ。」
寧大は、寂しそうに呟く。
「あいつは、そもそも、芸術家だから、俺とは、違う世界だったんだな」
自分と海の住む世界が、違っていた事を改めて、思い知った。
車から、降りた海は、澪と蒼の居るライブ会場とは、全く反対の公園に向かって歩いていた。
自分のバイオリンが、ケース毎、取り違えてから、全く、手掛かりがない。
きっと、このバイオリンの持ち主も、なかなかの腕前なんだろう。
自分のは、そんな高価な物ではなく、亡くなった母親が大切にしていた物だった。
「父さんの・・・」
幼い頃、母親が、大事にしていた。
自分の父親も、バイオリンが好きだった様だ。
だが、結局、バイオリンのせいで、母親と別れ、故郷に戻ってきた後、人知れず、亡くなっていた。
その時、自分は、まだ、幼かった。
一人で、自分を育てようとしたが、体の弱い母親には、困難な事で、あっという間に、逝ってしまった。
兄夫婦に、託して。
だから、現在の父親は、自分がバイオリンを弾くのを、嫌がっていた。
「やっぱり、血なんだな」
ふと、漏らした言葉が、そうだった。
「血って?」
聞き返した時、怒った父親の顔が忘れられない。
バイオリンを弾くことが、家族に、現在の両親に受けいられないと知りつつも、どうしても、母親の愛したバイオリンを諦める事ができなかった。
きっと、この持ち主も、バイオリンを探している。
どうやって、探そうか。
届出をするか、SNSで、探し出すか。
悩んだ末、届出をして、きちんと管理されないと、弦が傷んでしまうので、SNSで、情報を集める事にした。
勿論、自分がシーイである事は、伏せたままだった。
あまり、責めたくはない。でも、実際、彼は、相方の才能に頼ってきた。
そして、自分と一緒にいるのも、雰囲気や声があの人に似ているから。
「ねぇ・・・聞いているの?寧大」
すっかり、落ちぶれてしまった。
音夢の父親の力で、この世界にしがみついている。
何となく、逢って、ご飯食べて、夜を過ごして、ずるずると生活していた。
もう、別れ時かも。
音夢は、思っていた。
寧大。
シーイが去ってから、抜け殻の様だった。
確かに、アイディアとか、優れていたし、シーイが居なくなってからは、寧大に魅かれていたのも事実だし、寧大自身も、自分に魅かれていたと思っていた。
結局は、シーイの身代わり。
音夢も、大学生活を続ける様になり、歌の世界で、ボチボチ売れ始めていた。
「身辺、整理しろ」
父親からは、そう言われていた。
ダメダメな寧大を見て、今日にも、別れを切り出そうと思っていた。
「結局、あなたは、シーイの才能にあやかっていただけなのよ」
寧大を深く傷つけると思ったが、言わずに居られなかった。
「そうだよな・・・俺は、いつまで経っても、ダメなんだよな」
寧大が、否定しなかった事に、驚いた。
「あいつには、悪い事したなぁ。」
寧大は、寂しそうに呟く。
「あいつは、そもそも、芸術家だから、俺とは、違う世界だったんだな」
自分と海の住む世界が、違っていた事を改めて、思い知った。
車から、降りた海は、澪と蒼の居るライブ会場とは、全く反対の公園に向かって歩いていた。
自分のバイオリンが、ケース毎、取り違えてから、全く、手掛かりがない。
きっと、このバイオリンの持ち主も、なかなかの腕前なんだろう。
自分のは、そんな高価な物ではなく、亡くなった母親が大切にしていた物だった。
「父さんの・・・」
幼い頃、母親が、大事にしていた。
自分の父親も、バイオリンが好きだった様だ。
だが、結局、バイオリンのせいで、母親と別れ、故郷に戻ってきた後、人知れず、亡くなっていた。
その時、自分は、まだ、幼かった。
一人で、自分を育てようとしたが、体の弱い母親には、困難な事で、あっという間に、逝ってしまった。
兄夫婦に、託して。
だから、現在の父親は、自分がバイオリンを弾くのを、嫌がっていた。
「やっぱり、血なんだな」
ふと、漏らした言葉が、そうだった。
「血って?」
聞き返した時、怒った父親の顔が忘れられない。
バイオリンを弾くことが、家族に、現在の両親に受けいられないと知りつつも、どうしても、母親の愛したバイオリンを諦める事ができなかった。
きっと、この持ち主も、バイオリンを探している。
どうやって、探そうか。
届出をするか、SNSで、探し出すか。
悩んだ末、届出をして、きちんと管理されないと、弦が傷んでしまうので、SNSで、情報を集める事にした。
勿論、自分がシーイである事は、伏せたままだった。
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