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揺れる色彩は、次第に変わり
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澪が叔母に連れられて行ったのは、細い廊下の突き当たりにある控室だった。
叔母の息遣いが変わった。
「絶対、賛成するから」
叔母のお気に入りのバイオリニスト。
叔母は、海のバイオリンを気に入らない。
それは、澪をホッとさせていた。
叔母は、ターゲットを決めたら、絶対に譲らない。
自分の思い通りに動かす。
もはや、叔母の結婚生活は、破綻していたが、そもそも、叔母が、無理矢理、結婚した事が、原因だと思っている。
叔母の夫には、恋人が居た。
略奪愛だと、叔母は、自慢していたが、愛情をお金で買ったのだと思っていた。
互いのすれ違う感情をお金で、埋めていった。
はたで、見ていて、痛々しかった。
叔母は、少しも、幸せではなかった。
夫の愛情を得る為、多額の金銭を費やした。
澪の父親の会社を叔母は、狙っていた。
澪が跡を継ぐと知った起きから、叔母の攻撃が始まっていた。
「自分の親の会社を手伝って、何が悪いの?私にだって、貰う権利がある」
叔母が、父親の部屋で、怒鳴っているのを聞いた事がある。
「この会社は、澪が継ぐんだ。澪と澪の夫がね」
「あんな若い子を澪の夫にですって?家柄も貧しく、何もない子じゃない」
叔母は、澪の当時の彼氏を非難した。
「あの子は、この家の財産を狙った卑しい奴なのよ。澪とは、別れさせて」
「お前が、口を浜さむ事ではない」
あの日、叔母は、父親と口論していた。
叔母は、澪を憎んでいる筈。
澪は、感じていた。
側にいながら、澪の様子を伺っている。
自分を利用しながら、この澪の位置に座ろうとしている。
「素敵でしょう?」
叔母は、突然、ノックもしないで、その部屋の扉を開けた。
「こんにちは。日本語は、できるって、聞いていたわ」
突然、扉を開けられて、驚かない人は、いないだろう。
室内のスタッフが、顔を見合わせている。
何とも言えない空気は、澪にもわかった。
「急に開けて、悪かったんじゃない?」
澪は、その部屋が、叔母の言う人物の楽屋だと気付いていた。
「あら・・・そうだったかしら」
叔母は、とぼけて、そう言うと、ツカツカと部屋の奥へと進んでいった。
「ライブを見せてもらうわ。それで、契約を検討したいの。勿論、日本にいるだけだけど」
叔母の言葉は、迷いがなく、強引だ。
「期待しているわ。うちの事務所の第一号になるんだから」
叔母の言葉に、相手の反応は、薄かった。
「いいわね?」
「契約?」
ようやく、相手が口を開いた。
「そんな話聞いてないですけど」
少し、辿々しい日本語。
澪の瞳の奥で、何かが、光った。
・・・・え?・・・・
どこかで、聞いた事のある声。
その声は、澪の視界の中で、淡い光を纏っていく。
「誰とも、契約するつもりはありません」
そう言い切ると、その少年は、部屋を出て行こうとする。
その言葉、一つ一つが、光を放ち、淡い色になる。
・・・・この感覚・・・
海なの?
澪は、思わず、手を差し伸べていた。
叔母の息遣いが変わった。
「絶対、賛成するから」
叔母のお気に入りのバイオリニスト。
叔母は、海のバイオリンを気に入らない。
それは、澪をホッとさせていた。
叔母は、ターゲットを決めたら、絶対に譲らない。
自分の思い通りに動かす。
もはや、叔母の結婚生活は、破綻していたが、そもそも、叔母が、無理矢理、結婚した事が、原因だと思っている。
叔母の夫には、恋人が居た。
略奪愛だと、叔母は、自慢していたが、愛情をお金で買ったのだと思っていた。
互いのすれ違う感情をお金で、埋めていった。
はたで、見ていて、痛々しかった。
叔母は、少しも、幸せではなかった。
夫の愛情を得る為、多額の金銭を費やした。
澪の父親の会社を叔母は、狙っていた。
澪が跡を継ぐと知った起きから、叔母の攻撃が始まっていた。
「自分の親の会社を手伝って、何が悪いの?私にだって、貰う権利がある」
叔母が、父親の部屋で、怒鳴っているのを聞いた事がある。
「この会社は、澪が継ぐんだ。澪と澪の夫がね」
「あんな若い子を澪の夫にですって?家柄も貧しく、何もない子じゃない」
叔母は、澪の当時の彼氏を非難した。
「あの子は、この家の財産を狙った卑しい奴なのよ。澪とは、別れさせて」
「お前が、口を浜さむ事ではない」
あの日、叔母は、父親と口論していた。
叔母は、澪を憎んでいる筈。
澪は、感じていた。
側にいながら、澪の様子を伺っている。
自分を利用しながら、この澪の位置に座ろうとしている。
「素敵でしょう?」
叔母は、突然、ノックもしないで、その部屋の扉を開けた。
「こんにちは。日本語は、できるって、聞いていたわ」
突然、扉を開けられて、驚かない人は、いないだろう。
室内のスタッフが、顔を見合わせている。
何とも言えない空気は、澪にもわかった。
「急に開けて、悪かったんじゃない?」
澪は、その部屋が、叔母の言う人物の楽屋だと気付いていた。
「あら・・・そうだったかしら」
叔母は、とぼけて、そう言うと、ツカツカと部屋の奥へと進んでいった。
「ライブを見せてもらうわ。それで、契約を検討したいの。勿論、日本にいるだけだけど」
叔母の言葉は、迷いがなく、強引だ。
「期待しているわ。うちの事務所の第一号になるんだから」
叔母の言葉に、相手の反応は、薄かった。
「いいわね?」
「契約?」
ようやく、相手が口を開いた。
「そんな話聞いてないですけど」
少し、辿々しい日本語。
澪の瞳の奥で、何かが、光った。
・・・・え?・・・・
どこかで、聞いた事のある声。
その声は、澪の視界の中で、淡い光を纏っていく。
「誰とも、契約するつもりはありません」
そう言い切ると、その少年は、部屋を出て行こうとする。
その言葉、一つ一つが、光を放ち、淡い色になる。
・・・・この感覚・・・
海なの?
澪は、思わず、手を差し伸べていた。
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