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彼を語る声は、何色?
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シーイに逢える事。
迷いながら、決断したのに。
直接、逢える事は、叶わないようだ。
目の前に、現れたのは、黒いマスク姿の、ウェーブがかった髪を後ろで、一つにまとめた男だった。首の伸び切ったTシャツの上に、羽織ったパカーも、くたびれていて、あまり、人目を気にしないのかと、訝しんでしまう。
「どうも」
男は、軽く会釈した。
こういう場には、慣れていないのか、えらく無愛想だ。
「ごめんなさい。見ての通り、視覚での情報は、得意でないから」
澪は、おどけて見せた。
自分に視覚障害がある事を知ると、みんな、遠慮してしまう。
声の感じからすると、そんなに、世間離れした雰囲気はないが、同室のスタッフの雰囲気が戸惑っているのが、わかる。
「今回は、聞いている通り、うちのサロンのCMを出すという事で、シーイさんの歌声を入れたいと思って。。」
高岡の声がしどろもどろで、相手の雰囲気に戸惑っているのが、わかる。
「所で、肝心のシーイさんは?」
上擦った声を後輩が上げる。
「ズームでのお話でいいですか?」
寧大と名乗った男が話す。
声は、樹木の様な色ね。
澪は、クスッと笑ってしまった。
別に、おかしい訳ではない。
シーイが、若葉色だから、相棒の青年が、樹木と言うのが、うまい具合に、バランスが良い。
仲が良いのか、生まれながらのコンビなのか。
澪の反応に寧大が、怪訝な顔をした。
「ちょっと、都合が悪くて、間に合わなかったんです。遠方に奴は、居まして・・」
寧大は、タブレットを開いた。
「今回は、これで、参加で」
画面の中には、首から下だけの、自称シーイが座っているのが見えた。
寧大と同じような服装をして、椅子に座っている。
「失礼だが、本物ですか?」
「・・・と言うのは?」
高岡が、画面の中のシーイが、少し、幼く見えて、確認したのだ。
「どうすれば、信じてもらえますか?」
寧大は、高岡に聞いた。
「偽者騒動があったとしても、あの声がシーイの者なら、同じでは?」
寧大は、その声が同じなら、誰でも、シーイだと言いたい様だ。
「試して見ますか?」
寧大は、画面の中のシーイに、歌ように言った。
「聞いてください。彼の声ですよ」
画面の中で、シーイは、YouTubeで、寧大と作り上げた詩を歌い上げていく。
「えっと・・」
高岡は、画面に見入りながら、片手で、画像の検索を始める。
後輩達は、音を録りながら、画面に食いつく。
「確かに・・・シーイよね」
「確かに・・・」
スタッフが、画面から流れて来る声が、シーイの物である事を認めようとしていた。
寧大が、少し、笑った様な気がした。
「違うわ」
部屋の空気を凍りつかせる声が響いた。
澪だった。
迷いながら、決断したのに。
直接、逢える事は、叶わないようだ。
目の前に、現れたのは、黒いマスク姿の、ウェーブがかった髪を後ろで、一つにまとめた男だった。首の伸び切ったTシャツの上に、羽織ったパカーも、くたびれていて、あまり、人目を気にしないのかと、訝しんでしまう。
「どうも」
男は、軽く会釈した。
こういう場には、慣れていないのか、えらく無愛想だ。
「ごめんなさい。見ての通り、視覚での情報は、得意でないから」
澪は、おどけて見せた。
自分に視覚障害がある事を知ると、みんな、遠慮してしまう。
声の感じからすると、そんなに、世間離れした雰囲気はないが、同室のスタッフの雰囲気が戸惑っているのが、わかる。
「今回は、聞いている通り、うちのサロンのCMを出すという事で、シーイさんの歌声を入れたいと思って。。」
高岡の声がしどろもどろで、相手の雰囲気に戸惑っているのが、わかる。
「所で、肝心のシーイさんは?」
上擦った声を後輩が上げる。
「ズームでのお話でいいですか?」
寧大と名乗った男が話す。
声は、樹木の様な色ね。
澪は、クスッと笑ってしまった。
別に、おかしい訳ではない。
シーイが、若葉色だから、相棒の青年が、樹木と言うのが、うまい具合に、バランスが良い。
仲が良いのか、生まれながらのコンビなのか。
澪の反応に寧大が、怪訝な顔をした。
「ちょっと、都合が悪くて、間に合わなかったんです。遠方に奴は、居まして・・」
寧大は、タブレットを開いた。
「今回は、これで、参加で」
画面の中には、首から下だけの、自称シーイが座っているのが見えた。
寧大と同じような服装をして、椅子に座っている。
「失礼だが、本物ですか?」
「・・・と言うのは?」
高岡が、画面の中のシーイが、少し、幼く見えて、確認したのだ。
「どうすれば、信じてもらえますか?」
寧大は、高岡に聞いた。
「偽者騒動があったとしても、あの声がシーイの者なら、同じでは?」
寧大は、その声が同じなら、誰でも、シーイだと言いたい様だ。
「試して見ますか?」
寧大は、画面の中のシーイに、歌ように言った。
「聞いてください。彼の声ですよ」
画面の中で、シーイは、YouTubeで、寧大と作り上げた詩を歌い上げていく。
「えっと・・」
高岡は、画面に見入りながら、片手で、画像の検索を始める。
後輩達は、音を録りながら、画面に食いつく。
「確かに・・・シーイよね」
「確かに・・・」
スタッフが、画面から流れて来る声が、シーイの物である事を認めようとしていた。
寧大が、少し、笑った様な気がした。
「違うわ」
部屋の空気を凍りつかせる声が響いた。
澪だった。
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