星渡る舟は、戻らない。

蘇 陶華

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知らずに繋がる二人

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神経が昂る。
乗り越えなくてはならない事が、起きると、どうしても、僕は、神経質になる。
「馬鹿野郎!」
どうして、あんな粗忽な親父が繊細な和菓子を作る事ができるんだ。
僕は、あいつに似ていない。
音楽肌。
誰に似たんだ?が、親父の口癖。
小さい時に、我儘を通してバイオリンを習わせてもらった。
後から聞いた話だが、反対したのは、母親だったそうな。どこで、どうなったのか、才能があったのか、なかったのか、音大を出る事ができた。とりあえず・・・だ。
今は、食うに困っている。音楽で、食べて行くなんて、難しい。
「だから、良かっただろう。俺と組んで」
寧大が、豪語する。
「俺は、絶対、行けると思うんだけどな」
「そう言ってくれるのは、お前だけだよ」
「今度、駅前とかで、弾いてみたとか言って、YouTubeにあげよう」
「いやいや。。。顔出しは、不味いって」
一応、兄が、公務員なのだ。家族に魅惑は、かけられない。
「被り物なら、どう?」
「被り物?」
「とか、女装」
「う・・・・ん」
まんざら、女装は、嫌いでもない。寧大の凄い所は、有言実行な所で、この後、すぐ、駅前に僕を引き摺り出した事だ。
「本当。お前って、尊敬するよ」
僕は、ワゴン車から、掘り出された。バイオリン一つを抱えたまま。
「チャンネル登録増やしたいから、よろしく」
「おぉい!」
ウィックをつけた状態で、バイオリン弾けだと。そんなに、僕は、才能が抜きん出てる訳じゃない。だけど、寧大のギターに合わせて、ハモる事で、すこーしだけ、爺sんがついてた。あの日の失敗の傷も癒えてきた。
「格好いい所見せろよ」
寧大は、ワゴン車を、駐車場に、置いてくると、すぐ、ゴープロを向けてきた。
「本当。勘弁」
そう言いながら、僕は、曲を弾く事に、没頭した。


白杖の彼女とニアミスがあった、その日に、僕は、ミスをした。
「お前は、すぐ、自信過剰になる」
親父は、言う。気になった彼女にあってテンションが高くなった僕は、すぐ、落ち込んだ。仕事がうまくいかない事が重なっていた。
でも。
僕は、音楽が好きなんだ。
バイオリンを弾いていると、何もかも忘れる。即興で、寧大のギターに合わせて、歌う時もそうだけど。
ふざけて、アップしているYouTubeだけど、少しずつ、メッセージが届くようになっていた。
「女の子みたいな顔ですか?」
そんなメッセージが届いて寧大が吹き出した。
「やっぱり、そう、思う奴がいるんだよ」
「なんて、返事するんだよ」
「そうですって、返事だろ?」
「なんなら、女装で、活動する?」
「オーケストラどうするんだよ」
「確かに」
品位を損なうとか、言われるよな。僕は、自重しなくては。


「女の子みたいな顔かしら」
澪は、色々、思いを巡らせていた。いつしか、寝る前に必ず聞くルーティンになっていた。
この声。
コメントを聞く限りは、女装して活動しているようだ。
「女の子みたい」
「可愛い!」
街の人の声が、彼の容貌を表している。
「気になる」
想像しても、澪の頭の中に、女の子みたいな男性の顔は、考えられない。
「爽やかでいて、女の子みたいな・・・」
どんな顔なんだろう。澪は、メッセージを送っていた。
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