死神の守人

蘇 陶華

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やり直す二人の時間

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「大丈夫?」
僕は、倒れている八に声を掛けた。うつ伏せに倒れていた八は、僕の声に気が付くと
「うぅ。。」
と苦しそうに呻くと顔を上げた。
「やっと、ここまで、逃げてきたんだ。僕が誰か、わかる?」
八は、僕の顔を覗き込んだ。全身が、何かで、打ち続けられた様に、細い傷に覆われ、あちこちから流血があった。
「痛くない?」
僕は、八の前身を見回しながら言った。
「やっと会えた」
八は、そっと僕の首に手を回した。
「ずっと、探していたんだ。蓮」
八の薄い茶色の瞳が僕を覗き込んでいた。
「八。。」
八は、少し色素の薄い金色に近い瞳で、僕を見つめていた。
「ずっと、考えていたんだ。蓮さえ良ければ、2人だけに世界に行って、暮らそうって」
八は、僕の耳元で、囁く。
「僕は、蓮さえ居てくれればいいんだ。」
八の声は甘く、僕の心を擽る。僕は、いつの間にか、幼い姿ではなく、青年の姿に戻っていた。
「一緒に行こう」
八は、僕を抱きしめ、深く沈み込んでいった。森に、続く細い道は、いつの間にか、底のない沼の様になり、僕と八を飲み込む。僕は、八に導かれるまま、体を任せ、底のない沼に沈み込んでいった。何て、気持ちのいい世界なんだろう。八の細くて、長い指が、僕の頬を伝わり、そっと頭を押さえていた。八の吐息が、顔をかかり、夢ではない事を僕に教えていた。八と2人で、暮らす事。あのまま、何もなかったら、そういう事もあっただろう。一緒に同じ時間を過ごし、いろんな国を見て回った筈。八の事は、何でも、知っていて、八も僕の事は、何でも知っている。傷つける事もなく、傷つけられる事もない。僕は、目をそっと閉じていた。八の息遣いだけが、聞こえていて、心地よい。ふと、体に絡みつく、布地を感じて、目を開けると、そこは、僕の住み慣れた部屋だった。見慣れた僕のベッドの中で、八は、眠っていた。
「おはよう」
僕が、目を覚ましたのを察して、八も目を開けた。
「今日は、どこに行く?」
いつもの様に顔を覗き込む八に、僕は聞いた。
「どこでも、いいよ」
八は答えた。
「でも、どこにも、行かないで、ずっと、ここでこうしていたい」
八は、僕に両手を差し出した。
「今日も、明日も、明後日も」
ぎゅっと、僕を抱きしめる。
「ずっと、このまま、ここにいよう」
八の声が心地良い。八の声って、こんなに、心地好い音だった?
「どうしたの?」
首に、両手を回したまま、八が言った。
「いや。。。声が、少し違うなって」
「そんな事ないよ。変わらないよ」
僕が頭を起こそうとすると、八は、凄い力で、僕を締め付けてきた。
「ずっと、考えてきたんだ。蓮」
「八、少し、苦しい」
僕が抵抗するとますます、八の力が強くなった。
「蓮とずっと、一緒にいる為には、こうするのがいいんだ。蓮。僕と一緒になれば、もう、離れることがない」
八の指先から、細長い爪が、皮膚に食い込み、切り裂く音がした。八は、僕の首筋に、遠慮なく噛みつき始めた。
「蓮が、僕の体の一部になれば、迷いはないよ」
八は、僕の血にくを美味しそうに貪り始めた。
「蓮。。愛してるよ」
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