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歪な愛が先走る
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綾葉は、思いが叶って架を祖母と一緒に住む家に連れてくる事ができた。自分を待たせた事、怪我を負わせた事へのせめてものお詫びだと言っていた。愛情が自分にないのかもしれない。そう、何度も、自問自答した。長い時間を架と過ごしてきた。架の事は、全て知っている。キラキラした世界に架葉、住んでいる。その架の眼差しを受けるなら、それだけでいい。架を支える道を選んでいこう。
「何をしているの?」
自宅に戻るなり、パソコンで、何かを見る架が気になった。
「約束を守ろうと思って」
「誰との?」
架は、その名前を出すのを躊躇った。
「後輩だよ」
「後輩?」
綾葉は、それが誰だか、わかったが、気づかないふりをした。
「そう、それなら、見なくては、いけないわ。お茶の用意をしてくるわね」
キッチンにいる祖母に、架を一人にするように、声を掛け、部屋を出ていく。
「あぁ、そう。架。新しい人生を始めるの。莉子とは、離婚できたの?」
「あぁ・・離婚届を用意して置いたんだが、なかなか、取りにこなくて」
莉子は、離婚する気がない訳ではなく、藤井先生の退院後のサプライズステージの練習で、忙しく、会う暇がなかった訳だが、綾葉は、そう、受け取らなかった。
「離婚する気がないのかしらね?架。お願いよ。私だけを見て欲しい」
「わかったよ・・・」
時折、綾葉には、狂気を感じる。ここまで、追い詰めたのは、自分だ。元は、こんな子ではなかった。
「心陽にも、知ってもらわなきゃ。もう、架は、誰とも、合わないって」
黙って、ヘッドホンを付け、オンラインに見入る架を横目で、見やると、綾葉は、部屋を出ていった。
「どうしているんだい?」
祖母は、架が、綾葉の帰宅に付き添って、くれた事を安堵していた。このまま、綾葉と架が、一緒に生活してくれれば、何も、問題ない。息子夫婦が、残した宝物を守りたい。
「莉子との離婚が成立していないの」
綾葉は、不満をぶち撒いた。
「きっと、離さないんだわ。架葉、天才ですもの。父親が汚職で、捕まっても、架を自由にしないつもりなのよ」
「なんて、酷い女だろうね」
祖母は、綾葉を抱きしめた。
「おばあちゃんが、お前を守ってあげるよ。絶対、離婚するよ。あの女は、悪い女だからね。架も気づくよ」
「おばあちゃん、ありがとう」
綾葉は、そう言いながら、少し、言葉を選びながら、言った。
「でも、あまり、やりすぎないでね」
「何を言うんだい?何も、していないよ。ちょっと、懲らしめてやるだけだよ」
「心陽が、困る姿を見るのは、嬉しいけど。ピアノ教室の子供達が、疑われたら、嫌だわ」
「何を言うんだい?歩けない老婆を気遣って、ピアノ教室の子供達が、楽屋に入れてくれたんだよ。心陽の祖母だと言えば、入るのは、簡単だったよ。子供達が、目を離した隙に、ドレスを切り裂くのは、大変だったけどね」
「お疲れ様。きっと、ショックでコンサートどころでは、なかった筈」
「ろくに演奏なんて、できやしないよ」
2人は、架に、飲み物を作っていった。これからも、3人で、生活をしていく。ようやく、長年の夢が叶う。
「何をしているの?」
自宅に戻るなり、パソコンで、何かを見る架が気になった。
「約束を守ろうと思って」
「誰との?」
架は、その名前を出すのを躊躇った。
「後輩だよ」
「後輩?」
綾葉は、それが誰だか、わかったが、気づかないふりをした。
「そう、それなら、見なくては、いけないわ。お茶の用意をしてくるわね」
キッチンにいる祖母に、架を一人にするように、声を掛け、部屋を出ていく。
「あぁ、そう。架。新しい人生を始めるの。莉子とは、離婚できたの?」
「あぁ・・離婚届を用意して置いたんだが、なかなか、取りにこなくて」
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「離婚する気がないのかしらね?架。お願いよ。私だけを見て欲しい」
「わかったよ・・・」
時折、綾葉には、狂気を感じる。ここまで、追い詰めたのは、自分だ。元は、こんな子ではなかった。
「心陽にも、知ってもらわなきゃ。もう、架は、誰とも、合わないって」
黙って、ヘッドホンを付け、オンラインに見入る架を横目で、見やると、綾葉は、部屋を出ていった。
「どうしているんだい?」
祖母は、架が、綾葉の帰宅に付き添って、くれた事を安堵していた。このまま、綾葉と架が、一緒に生活してくれれば、何も、問題ない。息子夫婦が、残した宝物を守りたい。
「莉子との離婚が成立していないの」
綾葉は、不満をぶち撒いた。
「きっと、離さないんだわ。架葉、天才ですもの。父親が汚職で、捕まっても、架を自由にしないつもりなのよ」
「なんて、酷い女だろうね」
祖母は、綾葉を抱きしめた。
「おばあちゃんが、お前を守ってあげるよ。絶対、離婚するよ。あの女は、悪い女だからね。架も気づくよ」
「おばあちゃん、ありがとう」
綾葉は、そう言いながら、少し、言葉を選びながら、言った。
「でも、あまり、やりすぎないでね」
「何を言うんだい?何も、していないよ。ちょっと、懲らしめてやるだけだよ」
「心陽が、困る姿を見るのは、嬉しいけど。ピアノ教室の子供達が、疑われたら、嫌だわ」
「何を言うんだい?歩けない老婆を気遣って、ピアノ教室の子供達が、楽屋に入れてくれたんだよ。心陽の祖母だと言えば、入るのは、簡単だったよ。子供達が、目を離した隙に、ドレスを切り裂くのは、大変だったけどね」
「お疲れ様。きっと、ショックでコンサートどころでは、なかった筈」
「ろくに演奏なんて、できやしないよ」
2人は、架に、飲み物を作っていった。これからも、3人で、生活をしていく。ようやく、長年の夢が叶う。
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