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傷つけ合う似た者同士。

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「同居だぁ?」
僕は、莉子同様、目を白黒させた。いつ、誰が、そんな話をした?大体、藤井先生の家で、勝手な事はできない。
「私?私の考えでもあるのよ」
藤井先生が、珍しくジャージの上下で、現れた。
「色々、考えたんだけど。莉子を帰す訳にはいかないし、かと言って、私一人では、解決できそうにない。新に任せるには、社会的立場から、無理でしょう?」
「それって・・・どういう状況ですか?」
僕は、頭を掻いた。
「莉子のこれからを考えて、向こうに口実を与えてはいけない。悪いけど、黒壁君にも、手伝ってもらう事にした。」
いつの間に、黒壁と藤井先生は、話をしていたのか?
「昨夜だよ。お前が、莉子の寝顔に見惚れている間に」
莉子の前で、そんな事を言うから、僕は、赤面した。
「何、考えているんだよ。それ以上の事を考えていたくせに」
「いや・・・その」
莉子が、イタズラっぽく僕を見上げたので、僕は、余計に慌てた。
「しっかりとリハビリしながら、元の生活に戻るのよ。莉子。架さんとは、別れなさい。一緒に居る理由は、あるの?」
「それは・・・」
莉子は、口篭った。
「私の意地みたいな感情もあったと思う」
「今は、どうなの?」
莉子は、少し考えて口を開く。
「心配なのは、確かなの。壊れてしまいそうで。どうして、自分の本当の気持ちを隠すのか・・」
「莉子は、傷つけられても、彼を守るの?」
僕は言った。
「一緒にいてはいけない人も居る。お互いの姿がよく見えるから、傷つけ合うのでは?」
「そうなのかしら」
「架さんは、莉子が、車椅子になったからこそ、離れられなくなったのでは?」
藤井先生が、僕に言った。
「感情が強いんだけど、その表現は、歪んでしまっているの。彼の夢が壊れた時に、全て、歪んだんだわ」
「ピアノの事?」
僕は、言った。
「ピアノが、全く、弾けなくなた訳ではなと思う。」
「どう言う事?」
莉子が、僕を見つめる。
「彼は、自分で、弾けなくしたんだ・・・きちんと、リハビリすれば、弾けるんだよ。君と同じなんだ」
架も、莉子も似ている。似た物同士が、近づき、傷つけ合っている。
「だったら・・・新。お前が、リハビリしてみたら、いいだろう」
やり取りを聞いていた、黒壁が提案する。
「ピアニストに戻してやれよ」
「いやいや・・・本人が、望まない事はできないでしょ」
僕は、首を振った。
「莉子。君も同じだよ。君は、本当に歩きたいと思っているのかい?」
莉子の顔を覗き込む。
「答えはいらないよ。ただ、今日から、真剣にリハビリを受けて欲しい」
「2対1だけどな」
黒壁が、割り込む。
「藤井先生の為にも、早く、歩けるようにしような」
黒壁は、藤井先生の顔をじっと見つめて言った。
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