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決心
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僕は、救急車の中にいた。リビングの棚の中にあった大量の睡眠導入剤の事は、まだ、莉子に言わないでおこうと思っていた。車椅子が簡単に壊れていたのも、不自然だし、夫名義で、大量の睡眠導入剤があるのも、不思議だった。
「誰か、家族で、眠れないとか言っている人がいるの?」
「そんな人はいないわ」
「君は、眠れるの?」
「そうね。運動した後は、良く眠れるわ。お陰様で」
莉子は、少し微笑んだ。
「僕に何か、言いたい事はない?」
周りに救急隊員は居たが、聞きたい事がたくさんあって、周りを気にしていられない。
「色々、聞きたい事があるのは、わかるけど」
莉子は、大袈裟にため息をついた。
「私も、何が何だか、考えたくて。整理したいの」
「それは、今まで、練習して来たステージを諦めるくらいの事?なの」
「時々、じっと立ち止まらないと考えられない事があるの。走っていると、周りが見えないのと同じ。私、考えが足りなかったのかな」
遠い目で、答える。
「勢いだけで、進んできたように、思える。立ち止まって、考えなきゃいけなかったんだ」
莉子は、意味深に話す。救急搬送の事は、藤井先生にメールで伝えた。先生の嫌な予感が当たったんだけど、それは、心陽は、とても危険な女性という事だ。何一つ、証拠はないけど、莉子の周りで、起きている事故は、心陽が原因の可能性がある。
「誰かに連絡したの?」
莉子が聞いた。夫に連絡したのか?と聞こえる。
「藤井先生にだけ」
「そう・・」
携帯がけたたましくなったので、藤井先生かと思って出ると、それは、自分の母親からの電話だった。
「今、どこにいるの?」
また、救急車のサイレンが聞こえるので、母親は、驚いたらしい。
「救急車の中だよ」
「て・・・あなた?」
「僕じゃない」
僕は、チラッと莉子を見る。
「彼女が、怪我したかもしれなくて」
「彼女?って、あなた?」
母親が、電話の向こうで、顔色変えているのが良くわかる。
「彼女だよ。彼女。あとで、説明する」
莉子が驚いて、口をパクパクするので、そばにいた救急隊員が、不思議そうな顔をしている。
「そう説明させて」
僕は、莉子の顔を覗き込んだ。
「無責任な事は言わないでよ」
莉子は、小さく呟いた。決心するよ。僕が、君の時間を元に戻していく。
「誰か、家族で、眠れないとか言っている人がいるの?」
「そんな人はいないわ」
「君は、眠れるの?」
「そうね。運動した後は、良く眠れるわ。お陰様で」
莉子は、少し微笑んだ。
「僕に何か、言いたい事はない?」
周りに救急隊員は居たが、聞きたい事がたくさんあって、周りを気にしていられない。
「色々、聞きたい事があるのは、わかるけど」
莉子は、大袈裟にため息をついた。
「私も、何が何だか、考えたくて。整理したいの」
「それは、今まで、練習して来たステージを諦めるくらいの事?なの」
「時々、じっと立ち止まらないと考えられない事があるの。走っていると、周りが見えないのと同じ。私、考えが足りなかったのかな」
遠い目で、答える。
「勢いだけで、進んできたように、思える。立ち止まって、考えなきゃいけなかったんだ」
莉子は、意味深に話す。救急搬送の事は、藤井先生にメールで伝えた。先生の嫌な予感が当たったんだけど、それは、心陽は、とても危険な女性という事だ。何一つ、証拠はないけど、莉子の周りで、起きている事故は、心陽が原因の可能性がある。
「誰かに連絡したの?」
莉子が聞いた。夫に連絡したのか?と聞こえる。
「藤井先生にだけ」
「そう・・」
携帯がけたたましくなったので、藤井先生かと思って出ると、それは、自分の母親からの電話だった。
「今、どこにいるの?」
また、救急車のサイレンが聞こえるので、母親は、驚いたらしい。
「救急車の中だよ」
「て・・・あなた?」
「僕じゃない」
僕は、チラッと莉子を見る。
「彼女が、怪我したかもしれなくて」
「彼女?って、あなた?」
母親が、電話の向こうで、顔色変えているのが良くわかる。
「彼女だよ。彼女。あとで、説明する」
莉子が驚いて、口をパクパクするので、そばにいた救急隊員が、不思議そうな顔をしている。
「そう説明させて」
僕は、莉子の顔を覗き込んだ。
「無責任な事は言わないでよ」
莉子は、小さく呟いた。決心するよ。僕が、君の時間を元に戻していく。
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