16 / 106
侵入者は、2人を結びつける
しおりを挟む
僕は、なんて、鈍感で鈍いんだろう。公開した。何も、疑わず、莉子を病室に届け、廊下に出た時だった。僕と入れ替えに、病室に入っていった看護師が、悲鳴をあげた。すぐ、ドアは、施錠され、僕は、何が、起きたのか?理解できなかった。おそらく、あの時、誰も理解できなかった。そいつは、部屋のカーテンの奥に潜んでいたのだから。莉子の病室は、2人部屋だった。もちろん、特別室や個室だってある。だけど、当時は、認知症の酷い高齢者や、術後の患者がいて、莉子の部屋は、2人部屋で、空き待ちだった。105号室といっても、1階にある訳ではなく、病院の1階は、外来や救急室、売店となっており、105号室は、2階になっている。侵入者は、何食わぬ顔で、病室に侵入し、留守となっているベッドの脇のカーテンに潜んでいたのだ。ドアの向こうには、悲鳴と罵声が飛び交い、僕は、ドアに体当たりするも、びくとも動かなかった。
「何があった!」
黒壁が、真っ先に駆けつけ、警備員や看護師が、集まってきた。他の看護師は、野次馬を誘導し、外来は受付を停止した。立てこもりだ。理由は、わからない。
「新!今まで、莉子と一緒だったよな」
まるで、僕が、莉子を危険に合わせてしまったような口ぶりだった。
「中で、何があった?」
僕は、黒壁を振り切って、廊下へと走り出した。ここは、2階。真下は、外来で、柵のついた窓があるだけだった。外壁から、中に入るしかない。
「どこ行くんだ?」
黒壁は、慌てて僕の後ろについてくる。後から知った話だが、侵入者は、莉子がここに居ることを知って、交渉する為に侵入していた。何度、投稿しても、取り上げられず、莉子の父親に直訴したかったらしい。それは、復興誘致で、製薬会社や病院を誘致した為に、ここに住めなくなった住人の代表で、市長との対話を要求していた。勿論、警察や機動隊が、要請されていたが、あの悲鳴を聞いた僕としては、彼らが到着するのを待つなんて、できなかった。莉子が危険に晒されていないか?僕は、確認する必要がある。黒壁は、僕が何をしようとするか、わかったらしく、1階の裏口に出ると、すぐ、辺りを見まわし、足台になるのを探し始めた。僕は、通りかかったリネン室にあったタオルを2枚、持ち出し、首にかけた。
「まさか、ここを登るんじゃ?」
「そうだよ」
「落ちたら、どうする?」
「落ちないよ。運動神経は、お前より、いい」
下は、コンクリート。僕は、下まで伸びている雨樋を伝って、登り始めた。
「待ってろ!」
黒壁は、タオルを詰め込んだ籠を、押し出してくる。
「落ちろって?」
筋力に自信はある。脳みそが筋肉って、誰かに言われた。僕は、2回の窓の下まで、たどり着いた頃、病院の周りが騒々しくなってきた。侵入者が、音に気を取られ、窓辺に来た時、僕は、ちょうど、その下に身を潜めていた。
「こんな事をしても解決しない」
ヒステリックに騒ぐ看護師の声が聞こえた。あの時に、すれ違った看護師だった。
「俺だって、こんな事は、したくなかった。こうすれば、みんなの関心がおれたちに向けられる」
「父も、わかってるとは思います」
莉子の声だった。
「でも、父の力だけでは、どうにもならに事があるんです」
「だから、こうするしかないんだ」
侵入者は、苛立っている。
影から、そっとみると、侵入者は、僕に背中を向けて立っていた。病室のドアを背に、莉子は、車椅子のまま、こちらを見ていた。僕に気がつくと、侵入者に気づかれない様に、そっと視線を床に落とした。
「何があった!」
黒壁が、真っ先に駆けつけ、警備員や看護師が、集まってきた。他の看護師は、野次馬を誘導し、外来は受付を停止した。立てこもりだ。理由は、わからない。
「新!今まで、莉子と一緒だったよな」
まるで、僕が、莉子を危険に合わせてしまったような口ぶりだった。
「中で、何があった?」
僕は、黒壁を振り切って、廊下へと走り出した。ここは、2階。真下は、外来で、柵のついた窓があるだけだった。外壁から、中に入るしかない。
「どこ行くんだ?」
黒壁は、慌てて僕の後ろについてくる。後から知った話だが、侵入者は、莉子がここに居ることを知って、交渉する為に侵入していた。何度、投稿しても、取り上げられず、莉子の父親に直訴したかったらしい。それは、復興誘致で、製薬会社や病院を誘致した為に、ここに住めなくなった住人の代表で、市長との対話を要求していた。勿論、警察や機動隊が、要請されていたが、あの悲鳴を聞いた僕としては、彼らが到着するのを待つなんて、できなかった。莉子が危険に晒されていないか?僕は、確認する必要がある。黒壁は、僕が何をしようとするか、わかったらしく、1階の裏口に出ると、すぐ、辺りを見まわし、足台になるのを探し始めた。僕は、通りかかったリネン室にあったタオルを2枚、持ち出し、首にかけた。
「まさか、ここを登るんじゃ?」
「そうだよ」
「落ちたら、どうする?」
「落ちないよ。運動神経は、お前より、いい」
下は、コンクリート。僕は、下まで伸びている雨樋を伝って、登り始めた。
「待ってろ!」
黒壁は、タオルを詰め込んだ籠を、押し出してくる。
「落ちろって?」
筋力に自信はある。脳みそが筋肉って、誰かに言われた。僕は、2回の窓の下まで、たどり着いた頃、病院の周りが騒々しくなってきた。侵入者が、音に気を取られ、窓辺に来た時、僕は、ちょうど、その下に身を潜めていた。
「こんな事をしても解決しない」
ヒステリックに騒ぐ看護師の声が聞こえた。あの時に、すれ違った看護師だった。
「俺だって、こんな事は、したくなかった。こうすれば、みんなの関心がおれたちに向けられる」
「父も、わかってるとは思います」
莉子の声だった。
「でも、父の力だけでは、どうにもならに事があるんです」
「だから、こうするしかないんだ」
侵入者は、苛立っている。
影から、そっとみると、侵入者は、僕に背中を向けて立っていた。病室のドアを背に、莉子は、車椅子のまま、こちらを見ていた。僕に気がつくと、侵入者に気づかれない様に、そっと視線を床に落とした。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる