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1章
(23)美しいサブロクの頭は脳筋であった
しおりを挟むウァイトはサブロクとともに街に降りた。
バトラーにはそれぞれ役割があり、
サブロクはパワーが極端に強いらしい。
団長を守らなければならないときに
身を挺して守ってくれるらしい。
スラッとして背が高く細身の女性である。
どこにそんな怪力があるのかと
思ってしまう見た目である。
キュウイチゴ曰く、
見た目はきれいでモデルみたいだが
頭は残念らしい。
街の中はさすがに首都だけあって
活気があふれている。
アストロフィライトという首都は、
王宮を中心に円形状に街が広がっている。
王宮には宮殿と大聖堂と宿舎と闘技場が
備わっている。
大聖堂の鐘がこの町へ時間を知らせてくれる。
向かう先は市場だ。
一番活気があり情報もたくさん入ってくる気がしたからだ。
せっかくサブロクも同行していることなのでサブロクにもいろいろ聞いてみる。
「サブロクにとって私とはどんな
存在なんだ?」
「はっ!聖騎士国のトップであり、
全国民の希望であります」
サブロクは意気揚々と答える。
ウァイトはあっけにとられる。
「いや、そういうことではなく、
もう少し日常的なことを
しりたいのだが......」
「はっ!申し訳ございません。
常に国民のことを考え、
この国の行く末を按じられております」
サブロクはハキハキと答える。
「いや、だから、もっとこう、
普段の行いとかを聞きたいのだが......」
「はっ!申し訳ございません。
朝は私どもがお伺いする前には
すでに起床されております。
午前は休憩も取らずに執務を
されております。
午後は三老聖や七司聖と会議を
されております。
夕方にはよく闘技場に行き、
身体を鍛えられておりました。
夜は自室で常に書物を手に取り
自己研鑽をされておりました。
誰よりも早く起きて、
誰よりも遅く床につかれておりました」
サブロクは少し誇らしげにハキハキと
答える。
「わかった。ありがとう」
そう答えながらウァイトは
一気にテンションが下がる。
(いやいや、なにものなの...)
(働き方おかしいよね!?)
(そもそも能力も人望もすごくね!?)
(すべてが完璧な人...いや、むりむり)
心の中でブツブツとつぶやく。
市場で国民に話を聞いてみても
内容が変わらなさそうなら
もう聞くのはやめようと決心を固める。
満月はウァイトの代わりを務めるのは
絶対にむりだと心の中では諦めかけて
いる。
市場に着くと近くにいた
かわいいおばあちゃんに声を掛ける。
「おばあちゃん、少し話聞いていい?」
「団長様!あぁありがたや。ありがたや」
おばあちゃんは団長を見るやいなや
崇める。
「おばあちゃん、話聞いていい?」
もう一度確認をとる。
「何でも聞いてください。団長様」
「聖騎士国に住んでいる人にとって
団長ってどんな人なの?」
優しく問いかける。
「団長は国そのものですじゃ。
団長がいるからこそわしらは
生きていけるのですじゃ」
おばあちゃんが頷きながら答える。
「ありがとう。おばあちゃん。
わたしもみんなが住みやすいように
頑張るね」
ウァイトはありきたりな言葉で話を
終わらせる。
(これはみんな同じ答えかな?
聞いても無駄かなぁ......)
(いや、まだサブロクとおばあちゃんの
二人だけだ)
(団長として聞いているから決まった
答えが返ってくるんじゃないか!?)
もう一度トライしてみようと思う。
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