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1章
杏子先生のアパートで。
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杏子先生は手荷物を道路に落としたまま走り出す。
「先生!」
おれは無意識に追いかける。
未知を置いて追いかけてしまった。
先生が道を曲がる。
俺も道を曲がった。
(!? ここは!)
康正通りの杏子先生の家の前の通りに出た。
(杏子先生は家だ)
そして前の記憶を辿ってボロアパートに辿り着く。
階段を上がり、1番奥の部屋に着く。
一呼吸して息を吐く。
ピンポーン、ピンポーン
杏子先生は出てこない。
ドンドンドンッ
「杏子先生、杏子先生!」
扉を叩く。
人の気配がない。
ここじゃないのか!俺はアパートを飛び出し杏子先生が行ったであろう方向に走り出す。
そこでようやく気づく。
未知を放置していたことに。
「うわぁー、やってしまったあぁ」
とっさに体が動いてしまったとはいえ未知を放置するなんてなんてことをしてしまったんだ。
おれは慌てて来た道を戻る。
公園のベンチに未知は座っていた。
「ごめん………」
「それが答えなんでしょ!」
未知の声には優しさがない。
いつもの未知さんの声だった。
「いや、ちがう、先生が走ったからとっさに
体が動いてしまって」
「だからそれが答えなのよ!」
「違う!」
俺は座っている未知にキスをした。
「んっ、ん」
バンッ!
未知さんが俺の身体をはねのける。
「やめて!」
未知さんは帰ろうとした。
俺は未知さんの手を捕まえる。
そして後ろから抱きしめる。
「俺が好きなのは未知だけだ」
「本当に?」
未知は寂しそうにでも少し期待も込めて聞いた。
「ああ、本当に」
「わかった、でも今日はもう帰る」
未知をこちらに振り向かせる。
そしてまたキスをする。
今度は抵抗はしなかった。
「またね、じょうくん」
そういうと未知は通りに消えていった。
公園のベンチには杏子先生の荷物が置かれてあった。
「はぁー、先生の荷物は届けないといけないよな」
未知とあんなことがあった後に先生とコンタクトするのに気が引ける。
荷物は食材だ。明日学校に持って行くわけにもいかない。
杏子先生の携帯を鳴らす。
もちろんでない。
まあ、そうだよな。逃げた後に携帯電話に出るなんてことはないよな、と思いながら念のためもう一度鳴らす。
出ない。
携帯の時計に目が移る。
「あっ!やばい。帰るの遅くなった。
じんのがツンデレになってしまう」
おれは一度自宅に帰った。
じんのは作り置きしておいた晩ご飯を食べ終わっていた。
じんのとお風呂に一緒に入り寝かしつける。
じんのが寝静まったのを確認してから家を出る。
向かう先は杏子先生のアパートだ。
先生の荷物をアパートの取手にでも引っ掛けておこうと思う。
歩いている最中は、インターホンを鳴らして手渡しするか、
そのままドアノブに引っ掛けてLIMEで知らせるか、
ずーっと悩み続けた。
気付いたらもうアパートの前だった。
念のため照明がついているかどうか確認をする。
もうすぐ24時だが照明は付いていた。
いるのは確実だ。やはりインターホンを鳴らすべきか。
玄関ドアの前に着いても少し悩んでしまう。
まずはドアノブに荷物を掛ける。
帰ろうとするがまた戻ってしまう。
やっぱり鳴らしてみよう。
「ピンポーン」
「………………」
出ない。やっぱり出たくないんだろうな。
よし、帰ろう。
ドアノブに荷物を再度掛ける。
ピンポンを押したことにまだちょっとドキドキはしている。
階段を降りていたその時、
ガチャ!
ドアが開く。
おれは振り返ってドアの方を見る。
先生が顔だけをドアから出している。
「じょうくん?」
「はい」
なぜかちょっとうれしくなってしまう。
先生が手で俺を招いている。
先生はサンダルを履いていないのだろうか。
無理な体制でこちらを見ているんだろう。
顔と手だけしか見えない。
おれは階段を上がり玄関の中に入る。
「ごめんねー、お風呂入ってたのよ。
ちょうど上がったところだったからすぐに出れなくて」
先生はバスタオル姿だった。
「ちょっと先生………、さすがに見れないです」
「ごめんね、でもお風呂上がりだし仕方ないじゃん」
「それはそうですけど………」
「あっ、もしかしてまた勃っちゃった?」
先生は楽しそうに下から俺の顔を覗き込んでくる。
「まだ勃ってません!」
「まだってことはこのあとは勃っちゃうのかな?」
「もう、先生!」
先生は全く何事もなかったように俺と接していた。
あの涙とその場から逃げたのはなんだったんだろうかと言うぐらい天真爛漫な先生に戻っていた。
「はい、先生。荷物です。食材とか入ってたから
明日学校に持っていけなくて届けに来ました」
「ありがとね、もうじんのちゃんは寝た?」
「はい、ぐっすりです」
「じゃあ、届けてくれたお礼にお茶でも飲んでいって」
そういうと先生はお湯を沸かし始めた。
「ごめん、服着てくるね。
それともこのままのほうがいい?」
こんなこと聞いてくるのはいつもの先生だ。
「じゃあ、このままで」
「もう、じょうくんのいじわる………」
「先生が悪いんですよ、そんなこと言うから」
「じゃあ、遠慮なくこのままで!」
「えっ!?」
「だってお風呂上がりは暑いんだもん。
いつも寝る時は裸だしね」
「もうおれの負けです。好きにしてください」
キッチンで紅茶を入れてくれてる先生の後ろ姿は
髪の毛から雫が垂れてて妙に色っぽかった。
茶漉しを吊り戸棚から取る姿はバスタオルがずり上がり
もう少しでお尻が見えそうだった。
(先生って相変わらず無防備だよなぁ)
「あっ!見えてた?」
先生がお尻を片手で隠す。
「もう少しでしたが見えてませんよ」
「よかったぁ、って見てたってことだよね?」
「はい、おれも思春期真っ盛りの男の子ですから」
「ここで1人で変なことしないでよ!?」
「えっ!?手伝ってくれないの??」
おれは調子に乗ってしまった。
荷物を届けるだけにすればいいのに
先生がいつも通り接してくれるから
おれはいつも以上に行き過ぎた発言をしてしまった。
「じゃあ、先生とする………?」
「先生!」
おれは無意識に追いかける。
未知を置いて追いかけてしまった。
先生が道を曲がる。
俺も道を曲がった。
(!? ここは!)
康正通りの杏子先生の家の前の通りに出た。
(杏子先生は家だ)
そして前の記憶を辿ってボロアパートに辿り着く。
階段を上がり、1番奥の部屋に着く。
一呼吸して息を吐く。
ピンポーン、ピンポーン
杏子先生は出てこない。
ドンドンドンッ
「杏子先生、杏子先生!」
扉を叩く。
人の気配がない。
ここじゃないのか!俺はアパートを飛び出し杏子先生が行ったであろう方向に走り出す。
そこでようやく気づく。
未知を放置していたことに。
「うわぁー、やってしまったあぁ」
とっさに体が動いてしまったとはいえ未知を放置するなんてなんてことをしてしまったんだ。
おれは慌てて来た道を戻る。
公園のベンチに未知は座っていた。
「ごめん………」
「それが答えなんでしょ!」
未知の声には優しさがない。
いつもの未知さんの声だった。
「いや、ちがう、先生が走ったからとっさに
体が動いてしまって」
「だからそれが答えなのよ!」
「違う!」
俺は座っている未知にキスをした。
「んっ、ん」
バンッ!
未知さんが俺の身体をはねのける。
「やめて!」
未知さんは帰ろうとした。
俺は未知さんの手を捕まえる。
そして後ろから抱きしめる。
「俺が好きなのは未知だけだ」
「本当に?」
未知は寂しそうにでも少し期待も込めて聞いた。
「ああ、本当に」
「わかった、でも今日はもう帰る」
未知をこちらに振り向かせる。
そしてまたキスをする。
今度は抵抗はしなかった。
「またね、じょうくん」
そういうと未知は通りに消えていった。
公園のベンチには杏子先生の荷物が置かれてあった。
「はぁー、先生の荷物は届けないといけないよな」
未知とあんなことがあった後に先生とコンタクトするのに気が引ける。
荷物は食材だ。明日学校に持って行くわけにもいかない。
杏子先生の携帯を鳴らす。
もちろんでない。
まあ、そうだよな。逃げた後に携帯電話に出るなんてことはないよな、と思いながら念のためもう一度鳴らす。
出ない。
携帯の時計に目が移る。
「あっ!やばい。帰るの遅くなった。
じんのがツンデレになってしまう」
おれは一度自宅に帰った。
じんのは作り置きしておいた晩ご飯を食べ終わっていた。
じんのとお風呂に一緒に入り寝かしつける。
じんのが寝静まったのを確認してから家を出る。
向かう先は杏子先生のアパートだ。
先生の荷物をアパートの取手にでも引っ掛けておこうと思う。
歩いている最中は、インターホンを鳴らして手渡しするか、
そのままドアノブに引っ掛けてLIMEで知らせるか、
ずーっと悩み続けた。
気付いたらもうアパートの前だった。
念のため照明がついているかどうか確認をする。
もうすぐ24時だが照明は付いていた。
いるのは確実だ。やはりインターホンを鳴らすべきか。
玄関ドアの前に着いても少し悩んでしまう。
まずはドアノブに荷物を掛ける。
帰ろうとするがまた戻ってしまう。
やっぱり鳴らしてみよう。
「ピンポーン」
「………………」
出ない。やっぱり出たくないんだろうな。
よし、帰ろう。
ドアノブに荷物を再度掛ける。
ピンポンを押したことにまだちょっとドキドキはしている。
階段を降りていたその時、
ガチャ!
ドアが開く。
おれは振り返ってドアの方を見る。
先生が顔だけをドアから出している。
「じょうくん?」
「はい」
なぜかちょっとうれしくなってしまう。
先生が手で俺を招いている。
先生はサンダルを履いていないのだろうか。
無理な体制でこちらを見ているんだろう。
顔と手だけしか見えない。
おれは階段を上がり玄関の中に入る。
「ごめんねー、お風呂入ってたのよ。
ちょうど上がったところだったからすぐに出れなくて」
先生はバスタオル姿だった。
「ちょっと先生………、さすがに見れないです」
「ごめんね、でもお風呂上がりだし仕方ないじゃん」
「それはそうですけど………」
「あっ、もしかしてまた勃っちゃった?」
先生は楽しそうに下から俺の顔を覗き込んでくる。
「まだ勃ってません!」
「まだってことはこのあとは勃っちゃうのかな?」
「もう、先生!」
先生は全く何事もなかったように俺と接していた。
あの涙とその場から逃げたのはなんだったんだろうかと言うぐらい天真爛漫な先生に戻っていた。
「はい、先生。荷物です。食材とか入ってたから
明日学校に持っていけなくて届けに来ました」
「ありがとね、もうじんのちゃんは寝た?」
「はい、ぐっすりです」
「じゃあ、届けてくれたお礼にお茶でも飲んでいって」
そういうと先生はお湯を沸かし始めた。
「ごめん、服着てくるね。
それともこのままのほうがいい?」
こんなこと聞いてくるのはいつもの先生だ。
「じゃあ、このままで」
「もう、じょうくんのいじわる………」
「先生が悪いんですよ、そんなこと言うから」
「じゃあ、遠慮なくこのままで!」
「えっ!?」
「だってお風呂上がりは暑いんだもん。
いつも寝る時は裸だしね」
「もうおれの負けです。好きにしてください」
キッチンで紅茶を入れてくれてる先生の後ろ姿は
髪の毛から雫が垂れてて妙に色っぽかった。
茶漉しを吊り戸棚から取る姿はバスタオルがずり上がり
もう少しでお尻が見えそうだった。
(先生って相変わらず無防備だよなぁ)
「あっ!見えてた?」
先生がお尻を片手で隠す。
「もう少しでしたが見えてませんよ」
「よかったぁ、って見てたってことだよね?」
「はい、おれも思春期真っ盛りの男の子ですから」
「ここで1人で変なことしないでよ!?」
「えっ!?手伝ってくれないの??」
おれは調子に乗ってしまった。
荷物を届けるだけにすればいいのに
先生がいつも通り接してくれるから
おれはいつも以上に行き過ぎた発言をしてしまった。
「じゃあ、先生とする………?」
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