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1章

未知さんにギャップ萌え♪

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俺はいつもの駅の改札前で未知さんを待っていた。
今日は日曜日のためか改札口は人で賑わっている。

駅の改札から見知らぬ女の子がこっちを向いて手を振って
向かってくる。
俺好みのボーイッシュなカッコだ。
くるみも杏子先生もましてや未知さんなんかも絶対にしない格好だ。
俺の近くにいる人に向けて手を振っているのだろうと思っていた。

「ちょっとぉ、じょうくん!」

「えっ!未知さん?」

「何言ってるの、私に決まってるじゃん。
 もう、なんで無視するの」

「いや、まさか未知さんだって思わなくて」

「変かな?この格好………」

「いや、すごく可愛いです」

未知さんの格好は絶対に誰もが想像できないだろう。
細身の白いパンツに大きめのダボッとした水色のシャツ。
髪の毛はポニーテールにしてアップにしている。
前髪が両サイドにほおに沿ってアゴまで垂れている。
そして未知さんが着けていなそうな大きいリングタイプの
イヤリング。

「本当に?」

「はい、おれの好みの服装です。
 いつもの未知さんと違って
 未知さんてぜんぜんわからなかったです」

「よかったぁ」
未知は嬉しそうに胸に手を当てた。

「じょうくんの服も素敵だけど、
 くつもかっこいいね。白地に青のラインは清潔感があって
 いいと思う」

俺のお気に入りのくつを未知さんは褒めてくれた。
おれはくつに少しこだわりがある。
唯一の趣味と言っていい。
そんな俺の趣味を褒めてくれたら嬉しくなるのは当たり前だ。

「あっ?なんで今日は『じょうくん』てよぶんですか?
 いつもは藍原くんて言うじゃないですか」

「だってみんなだけずるいんだもん。
 私だってじょうくんていいたかったの」
下を向いて照れながら恥ずかしそうに言った。

(かわいい!かわいすぎる、未知さん)

「ねえ、いこっ?」

「よろこんで」

2人で県外のこの辺では1番大きなテーマパークへ向かった。

そのテーマパークは絶叫系で有名だった。
未知さんが絶叫系なんて乗れるのか心配だったが
全くそんなことはなかった。
未知さんがテーマパークが大好きって言ってた言葉を思い出した。この人は本当に好きなんだと。

「うわぁー!たのしいぃー!」
弾丸という絶叫コースターに乗っているが未知さんは両手を離し、満遍の笑みで叫んでいる。

あんなに冷静で寡黙で的確な未知さんが
こんなにも無邪気で明るくて楽しそうにしている。
完全におれはギャップにやられてしまっている。

「ねえ、次なに乗る?」

おれも絶叫系は嫌いではない。

「ハイフライはどうですか?」

「いい!それのりたい!いこっ」

そういうと未知さんは俺の手を握って引っ張っていく。

「未知さん?」
引っ張られて思わず名前を呼んでしまう。

未知さんはぜんぜん恥ずかしそうにしない。
むしろ俺の方が恥ずかしくなっている。

「じょうくん、2人だけの時は未知でいいよ」
未知は振り向きながら素敵な笑顔で答えてくれた。

…………………

「喉乾いちゃった」

「じゃあ俺買ってきますよ」

「未知は何がほしい?」

俺に未知って呼ばれてめちゃくちゃニコニコしている。

「じょうくん!」

まさかの俺が欲しい宣言。

「俺は今カラカラで水っ気ないのでまずいですよ」

「まずくてもおいしくいただきます」

未知は本当に人が変わったみたいだ。
素直な未知はかわいすぎる。

「それでなにがいいの?未知は」

「アイスティー、ストレートで」

「はーい、ここで待っててね」

「うん」

おもったより買うのに時間がかかった。

戻るといつものことながら男たちに絡まれている。
何度目だ………追っ払おうと未知に近づく。

「本当にごめんなさい。いま、彼氏を待っています」

「あっ、そうなんだ、ごめんね。
 かわいかったから声かけちゃった」

「こちらこそ何もできなくてごめんなさい」

「いいよいいよ、悪かったね、じゃあね」

男たちは去って行った。

「未知さん、すごいじゃん。やればできるんじゃん」
とっさに出た言葉だから未知さんになってしまった。

「だってせっかくのじょうくんとのデートを
 邪魔されたくなかったんだもん」
座った未知さんは俺の顔を下から覗き込むように上目遣いになった。その顔はかわいい小悪魔にしか見えなかった。

(あんなに冷淡で無機質だった未知さんがなぜこんなにも変わるのか!?そのギャップに心が惹かれてしまう)

「じゃあ、はい!おれいのアイスティー、ストレート」

「ありがとう」
かわいい小悪魔はニコッと笑った。

「じょうくん、何飲んでるの?」

「コーラだよ」

「飲んでみたいな」

「えっ?飲んだことないの?」

「うん、炭酸はあんまり飲んだことないの」

炭酸を飲んだことない女の子………と聞くと
なぜかそれだけで気持ちがたかぶる。
プリクラ撮ったことない女の子みたいな感じといっしょだ。
レア感を感じてしまう。
そして、それに俺といる時に挑戦しようとするところも
またかわいい。

「はい、どーぞ」

ごくりっと飲む。

「わぁー、しゅわしゅわするね」

「どうお味は?」

「じょうくんの味がした……」

「えっ?」

「じょうくんとはじめての間接キス………」
未知は照れながらもうれしそうに俺をみた。
その顔は本当に嬉しそうだった。
おれはそんな未知を見惚れてしまった。

「わたし変なこと言っちゃったね」

「いやいや、今日未知さんがかわいすぎて………」

「えっ?」

「あっ、ごめん。今日の未知はいつもと違って
 俺がドキドキしちゃった」

「ありがとっ。実は思い切ってお姉ちゃんの服
 かりてきちゃったの」

「そうなんだ。それでもすごく似合ってるよ、未知」

「はい、じゃあ、わたしのストレートティーものんで」
未知は首を傾けて俺を覗き込むように言った。

(ここにも素敵な小悪魔がいた)

「うん」

未知が飲ませてくれる。
はたからみたら完全にラブラブなカップルだろう。

未知さんは俺の飲んだ後のストローに口をつけてから
こう言った。

「ねぇ、じょうくん、1つお願いがあるんだ………」

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