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1章

未知先輩と2人だけの文芸部のはずが………

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「もしもーし、あいはらくーん、もしもーし」

俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
そうか、おれはいま文芸部の部室で仮眠していたんだった。

(はいはい、いま起きます)と心の中で思う。

身体を起こすと顔に被せていた本が床に落ちる。

「相原くん、ここで何してるのかな?」

声を掛けてきたのは七瀬杏子先生だった。

(杏子先生!)

さっき屋上で見かけたことを思い出して
気まずさを覚える。

とっさに
「橘先生にここならサボれるって聞いてきました」と答える。

「奈々ったらもう。勝手なんだから」

「やっぱりここ使っちゃだめでしたよね?」

「いいよ。つかって。
 でも2つ約束してほしいの」

「できる約束ですか?それ」

「1つはさっきの屋上のことは忘れて」

「忘れるも何も何にも聞いてないですよ」

「ならよろしい、もう一つは文芸部に入ること」

「はっ?それはできないお願いですよ、先生」

「今部員が高2の1人だけなの。
 このままじゃ廃部になっちゃうの」

「協力したいのは山々ですけど部活入るつもりないんで」

「そっかぁ、それは大変だなぁ。うちの部員の女の子が
 相原くんていう高一の男子生徒に下着盗まれそうになった
 って言ってたんだよねー」

「えっ!なんでそれを。誤解です。誤解です」

「誤解なの?誤解なら解かないといけないわね。
 それじゃ、わたしが間を取り持ってあげるから
 まずは文芸部に入部してください」

「入部しないとまずいことになる?」

「なる」

「わかりました。わかりましたよ。
 でも部活動にはそんなに参加できないですよ。
 家族の事情で早く帰らないといけないので」

「柔軟な対応ができるように
 顧問の私と部長のみっちーとで話しておくね」

「ところでくるみちゃんとなにかあった?
 2人とも顔が辛そうだからなんかあったのかなぁ
 と思って」

「そう見えるのは別れたからですかね」

「ええ!なんで!くるみから別れるって言ったの?」

「いや、俺からです」

「どうして?」

「ちょっと色々ありまして」

「くるみは完璧だと思うけどなにか物足りなかったの?」

「くるみはすごくできた女性です。
 俺には勿体無いくらいです」

「じゃあ、なんで。。。」
先生はなぜかかなり食いついてくる。

「あんまり広めないでくださいね」

「あっ!その本、年上って。
 他の女性に恋したの?」

「い、いや………」

「先生も年上なんだから女の心が知りたかったら
 何でも相談していいよ」

「そういうことがあったらお願いします」

「じゃあ、早速だけど今日の放課後部活をしまーす。
 短い時間にするからちゃんとくるように。
 みっちーにも誤解を解かないといけないからね」

「わかりました。でも長居はしませんよ。
 誤解がとければ帰りますから」

「はーい。じゃあ、またあとでね」

………………放課後


扉を開けるとそこには
杏子先生と部長の未知さんとなぜかくるみがいた。

「えっ!なんでくるみがここに………」

「私が部活に誘ったの」
杏子先生は笑顔で悪びれもなく言う。

くるみも俺の顔を見て少し動揺している。

「新入部員が2人も増えたから今日は
賑やかだね!みっちー」

「わたしは1人で静かな方がいいです。
 勝手なことしすぎです。先生」
未知が低いトーンのまま少しイラッとしている。

「では新入部員が2人も増えたことだし
 自己紹介しないとね」

「高校1年C組、相原青です」

「へんたい」
ぼそっと小さな声で未知がつぶやく。
顔は無表情だ。
この子には心がないのかと思った。

「えっ」
くるみが反応する。

そこにすかさず杏子先生が声を掛ける。
「くるみちゃんも簡単に自己紹介して」

「はい、高校1年C組、白川くるみです。
 よろしくお願いします」

「はい、じゃあ、次みっちー」

「2年A組 工藤未知」
相変わらず無表情で淡々と小さな声を発する。

「じゃあ、早速だけど、じょうくんのヘンタイタイムの
 検証をしましょう」

「ちょっと先生、違う!
 ………いや、違うわけではないのか………」

やってたことは側から見ると変態そのものだ。

「じょうくん………」
くるみは悲しそうな声を出す。
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