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●REC
●REC<36>
しおりを挟む(二年でも四年でも驚きだけど、この年齢でエッチなしのお付き合いすることなんてあるんだ……!? 十代のときほどではないと思うけど、まだ衰えるって感じでもないはずでしょ)
モテ男の彼が一途な愛ゆえに頑なに彼女を作らないでいたことには納得が行くとして、私が無視出来なかったのは空白の二年についてだ。
細かい作業が得意なわりにどんぶり勘定なところがあるのは確かだが、二年と四年を間違うというのは考えにくい。
(鏑木くんが性欲ないわけじゃないのはこれ観てたらわかるし、彼女さんがそういうこと苦手で合わせてあげてたとかかな。…………ありそう。どこまで優しいの?♡♡)
私は恋愛になると著しくIQが低下してしまう悲しい生き物なので、彼が昏睡レイプを強行している最中だということも忘れ、心の中で拍手喝采を送ってしまっていた。
「いや、久しぶりすぎるだけかもしれないし、相手が紗世ちゃんだからかもしれないね?♡♡ どれが本当の理由だと思う?♡ やっぱ全部かな?♡」
矢継ぎ早に問いかけた彼は、少し屈んで閉じっぱなしの口元に耳を寄せた。返ってくるはずもないのに、答えを欲しがっているらしい。
(やっぱり可愛い……♡♡ よっぽど嬉しかったのかな?♡ 起きてたかったなあ……。そしたら、私からも色々できたし、もっと気持ちよくしてあげられたのに)
思考はさらに迷走を続ける。
今や、なぜこのような行動に出たのかについて問い詰めたい気持ちは隅っこに追いやられ、『どうして起きているときに誘ってくれなかったのか』、あるいは『どうしてこのときに起こしてくれなかったのか』という疑問が中央に居座っていた。
「…………ん?♡ やっぱり相手が紗世ちゃんだからだろうって?♡♡ 自信家だなあ♡ だけど、俺もそう思う♡♡」
(言ってない言ってない♡♡ もし私が起きててもそうとは言わなかったよ♡)
あちこちに負担がかかる姿勢をキープしている彼は、どんな顔で私を見つめているのだろう。
「このままだといちばん奥まで行けないな…………。ごめん、紗世ちゃん♡ あんよ持ち上げさせてね♡♡」
いきなり飛び出した幼児語に気を取られていると、彼は私の右脚を肩に掛けた。
(私、こんなに身体柔らかいんだ!? 知らなかった…………!)
「やるねえ、紗世ちゃん♡♡ エッチな旗上げゲームみたい――……じゃなくて♡ これだけ柔軟なら色んな体位試せそうだな♡ 四十八手、二人で制覇してみちゃう?♡♡」
(……鏑木くん、この状況も実は楽しんでたりしない?♡ お人形さん遊びしてるみたい……♡)
彼は脛に顔を寄せ、リップ音付きのキスをした。
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