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●REC
●REC<20>
しおりを挟む(AVだったら、ちゃんとしたカメラマンさんがいるはずだし。……あえて素人モノっぽく見せるためにカメラ置いて……とかもなくはないんだろうけど。コスト削減にもなるし。でも、これはそうじゃない。鏑木くんっていう個人が、自分と――……もしかしたら私のために撮影したもの)
私には不自然に欠落した記憶があった。へべれけになって、次に目覚めるまでの記憶だ。
その詳細について知りたくて、一緒にいた彼に尋ねた。一度ならず、数度に跨って。――――しかし、彼は今日まで不自然なほどに明言を避けてきた。
本当は、映像が始まってすぐに理解してしまっていた。
『男性は鏑木くんで、女性の側は私』ということにも。映像のなかで行われている行為についても。それから、これが先週金曜に起きた出来事なのだということも。
「起きてるけど、寝たふりしてるとか?♡ だとしたら、いい度胸してるじゃん♡♡ 一応、試してみようかな……♡」
考えているあいだにも場面は進んでいく。思考が追いつく隙なんて、これっぽっちも与えてくれない。
(鏑木くんも昔からそういうとこあるよね……。自分に有利なうちに物事進めちゃって、気付いたら彼のペースに巻き込まれてて、全部彼に都合がいいように場が整えられてるの…………。でも、私は全然嫌じゃなくて、『もっと引っ張ってってほしい♡』って思っちゃってた……♡)
私は画面に映る彼の横顔のラインに見惚れて、注意力散漫になってしまっていた。
「「おーい♡♡ 起きてる?♡ 狸寝入りの子猫ちゃん?♡♡」」
「!?」
そこに大好きな声が前と後ろから聴こえ、肩をびくりと震わせた。
「びっくりさせちゃったか♡♡ そうだよね♡ 『終わるまで静かにしてよう』って言ったの俺だったもん。ごめんね♡ 紗世ちゃん、さっきからじっとして動かないからさ?♡ 寝ちゃってないか確認したくて♡♡」
今、喋っているのは、もちろん背後にいるほうの彼だ。映像は再び一時停止されている。
(私も口頭で答えたほうがいい? 『寝てないよ』って。……それとも、これは罠? 上映前の約束を破らせて、お仕置きするための口実を作ろうとしてるとか……?♡♡)
答えるべきか黙っているべきかわかりかねて、咄嗟に首を横に振った。後ろを向いていても伝わるように、少しオーバーに。
「寝ちゃったわけじゃなくて、見入ってただけだったみたいだね♡ 安心安心♡ 確認も無事済んだし、続き観よっか♡♡ ちょうどいいところだし、気になるでしょ?♡♡ このあと、なにが起きるのか……♡」
彼は耳元に囁きと熱を残し、再生ボタンを押した。
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