yours-夢の罪過-

●REC

●REC＜19＞

「ほんとどんどん溢れてくるな……♡♡ お酒もいっぱい飲んでたし、脱水しちゃわない？♡ これ、絶対俺の唾液だけじゃないからね？♡♡ 口の中いつもこんな味じゃないし♡ 紗世ちゃんのエッチなジュースでお腹いっぱいになっちゃいそう♡♡」

　映像の中の彼はとろとろの蜜を大量生産中の秘部から口を離し、熟睡中の私の背中をソファにそうっとつけた。

（あっちの私に向かって言ってるのはわかってるけど、私もびしょびしょだからリアルタイムで言葉責めされてるみたい♡♡ 鏑木くんの声で聴くエッチな台詞、刺激強すぎ♡♡ まだ意識ある状態でしたことないのに、簡単に想像出来ちゃう♡♡ このときみたいな感じじゃなくて、普通にエッチしてるときの鏑木くんのこと…………♡♡）

　心なしか呼吸の浅くなっている画面の中の私を羨望の眼差しで見つめる私の息も、準備運動なしで走ってきたあとのように上がっていた。

（案外、独り言多いほうなのかな？　一緒にいるときは無言になることもそんなにないし――……。ていうか、私といる時点で独りじゃないから知らなかったけど、意外な一面♡ ちょっと可愛い♡♡ ……って、ほんわかしてる場合じゃないけど……！）

　その調子で現実逃避に走れたらよかったけれど、ぴちゃ……とか、くちゅ、といった音が無慈悲にも現実を突きつけてくる。

（もしかして独り言じゃないのかな。私に話し掛けてるつもりでお話ししてくれてる？♡♡ ……にしても、すごい音♡♡ 鏑木くん、いつもこんな大音量で映画とか観てるの？　あんまりそういうイメージないけど……。もしかして、今回だけの特別きょうはわざと…………？）

　――――最初は、鏑木くんによく似た男優さんと私そっくりな女優さんが絡み合っているAVを見つけた彼が、このあとの行為を盛り上げるために一緒に鑑賞することを提案してきたのだと思っていた。

　彼は普通に行うだけでも楽しいことをさらに楽しむための工夫を惜しまないひとだから。
　
　しかし、『yours』の服を纏った鏑木くん似の男優さん――というだけならギリギリありえるにしても、私に似た女優さんまでもがあの日の私とまったく同じ服を着用しているというのは天文学的確率だありえない。

（訊きたい……！　今観てるのがなんなのか、私にも理解出来るように説明してほしい……！！　やっぱり副音声付けてもらえばよかったかも…………。いや、もうわかってはいるけど……！）

　そこで気付いた。『これは彼の言う通り、あの日の映像』なのだ、と。あの日というのは、先週金曜のことだ。久々に好きなだけ飲んではめをはずして泥酔した挙げ句、鏑木くんの家のベッドで目覚めた日の――――。