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●REC
●REC<8>
しおりを挟む(…………って、そっち!? 頭に被せたフードが取れるよりも、寝てる人が顔上げる確率のほうが高そうなのに! よっぽど髪サラサラな人なのかな? 羨ましい……!)
視界の端に何か動くものを捉えたら、そちらに意識を引っ張られてしまう――――というのは、人間に限らず動物全体の習性ではないかと思う。そうでなくては、自然界では生きてはいけないはずだから。
長々と説明したけれど、言いたいことはただひとつ。『高い鼻と完璧な横顔のラインで、男性の正体が掴めてしまった』ということだ。
「!!」
――――私は何年も彼の隣に座っていた。ふたりきりで出掛けるときは当然として、みんなで集まるときも同じだった。メンバーは複数名いるはずなのに、なぜか毎回彼の隣の席になって、飲み会の間も彼とばかり話していた。
それを思えば、ふたりきりで会うくらい親密になったのも必然だったといえよう。嫌と言うほど――嫌だと思ったことなんて一度もないけれど――見てきたその横顔を、まさか見間違えようはずがない。
「鏑木くん……!!」
確信を胸に、画面に向かって呼びかけた。見紛うはずのない彼の名を。
「どうしたの?♡ 俺の名前呼びたくなった?♡♡ それとも、視界に俺がいなくて不安になっちゃったかな?♡♡ 大丈夫だよ、ちゃんと後ろにいるから♡」
すると、背後の彼が私を羽交い絞めにしてきた。窘めているつもりかもしれない。再び停止した画面に映し出されているのは、やはり鏑木くんその人で――――。
「そうじゃなくて…………!」
視界に本物はおらずとも、過去の彼は映像の――画面の中にいる。
「うん♡♡ そうだね♡ 紗世ちゃんが言いたいこと――じゃなくて、訊きたいことかな?♡ どっちでもいいけど、俺にもなんとなくわかってるよ♡♡」
拘束がわずかに緩んだけれど、これ幸いと抜け出すほど浅慮でも蛮勇でもない。
「……でもさあ、上映前に注意したじゃん♡♡ 『静かにしててね』、って。紗世ちゃんもお約束してくれたよね?♡♡ 『静かにしてるよ』、って……」
首を縦に振って肯定の意を示す。彼は基本的に寛容で温厚な人物だ。しかし、彼の定める許容範囲を少しでもオーバーしてしまうと、途端に冷酷になる――ということを、私はよく知っていた。
「一回目だから見逃してあげるけど、次、映像が流れてるときに可愛い声が聞こえたなって思ったら、今日もエッチおあずけにするから」
彼は腕の中で獲物がおとなしくしていることに満足したのか、完全に拘束を解いてくれた。
――が、腕の重みも密着感も消えてしまったのが寂しくて、身体の横につけていた彼の腕をいそいそと引っ張ってきて、半バックハグ状態を自ら作り出した。
「そんなのやだ…………」
駄々っ子のように拗ねた声を出すと、彼はもう片方の腕を動かして私を抱き締めた。
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