yours-夢の罪過-

●REC

●REC＜1＞

「…………先週、話してくれたじゃん。紗世ちゃんが見たエッチな夢の話♡♡」

「『夢の中で鏑木くんに抱かれてたかも』っていう？」
　
　満を持して切り出したら、彼女は一発で正解を叩き出した。それ以外に答えようがなかったんだろうけど、すんなり答えたのは少し意外だった。
　
　もっと恥じらってくれるかと思ったんだけど――羞恥でパンク寸前の彼女なら、これからたくさん見れるだろうからいいか♡

「そう、それ♡ ……で、そのときさ、『夢の中で紗世ちゃんを抱いてた俺が、いつもの俺とはだいぶ違う感じだった』とも言ってたじゃん？」

　――――唐突で申し訳ないが、俺の好きなジャンルのひとつはミステリだ。
　
　序盤はほとんど情報がもたらされず、伏せ札ばかりが溜まっていく謎の多いタイプのミステリなんかは特に大好物といっていい。

　大体中盤以降になると思うんだけど、数少ないヒントから真相を類推していたところに、犯人の輪郭を浮かび上がらせたり事件の方向性を決定づけたりするようなターニングポイントとなる出来事が発生して、そこから真実が怒涛の勢いで解明されてくやつ。
　
　ここまで聞くと、名探偵的な立ち位置のキャラが絡まりまくった謎の糸をするする解いていくことにカタルシスを感じてると思われそうだけど、そういう普通の楽しみ方は俺は一切してなくて――――。

　俺・が・感・情・移・入・し・て・る・の・は・、探偵側じゃなくて犯・人・側・だ。

　犯人たちは、殺人まではいかないとしても、そこそこ大きい悪事をしでかしてるからには隠し通さなくちゃならないし、そのためにトリックやトラップなんかをそこらじゅうに仕掛けて工作する。煙に巻く。　
　
　でも、その一方で、彼らは心のどこかで自分の用意したとっておきの謎が自分以外の――しかし、自分と同等以上に優れた頭脳を持つ――人物によって暴かれることを期待してるんじゃないかと思うから。

　――――お先真っ暗だとしても、たくさんの人の度肝を抜いて、あっと言わせたいんじゃない？

　――――自分が犯行を起こしたことで得られる直接的な結果よりも、驚く顔が見たかったんじゃない？
　　
（俺の場合、驚いた顔が見たいのはたったひとりなわけだけど……♡♡ さて、どんな反応が見れるかな？♡♡）
　
　あの日のことを話そうと決心したときから、ずっと快楽物質垂れ流しでぞくぞくしてる。こんな背徳感、紗世ちゃんを犯したとき以来だよ♡♡ ――って、びっくりするほど最近じゃんね♡