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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<44>
しおりを挟む「ちょうど? ベッドでごろごろしながら映画とか観るために、ここにテレビ置いてあるんじゃないの……?♡♡」
家電量販店でしかお目にかかったことのない大画面のテレビは、ベッドに横になって観るのにちょうどいい位置に設置されている。距離も高さも完璧だ。しかし――――。
(…………鏑木くん、そんなに映画観るの好きだったっけ?)
様々なハラスメントが横行する薄っぺらいバラエティー番組から偏向報道甚だしいニュース番組に至るまで、彼はテレビ番組全般を嫌悪していた記憶がある。
(ドラマも『実写と原作の乖離とか役者の演技が棒とか以前の問題だよ。台詞が聞き取りにくいったらありゃしない。……B級映画なんか観たあとは、地上波で放送されるようなやつに出演してる奴らはそれでも上澄みだと思わざるを得ないけどね。でも、全員発音の基礎から学び直したほうがいい。その点、映画の日本語吹き替えやアニメはいいよ。みんな大好きスタジオジ……なんちゃらの作品は論外だけどね』って語ってたっけ)
鏑木くんの容赦のない辛口コメントは仲間内でも有名で、『息をするように毒舌を振るう男』という立ち位置だし、そこが唯一の欠点として扱われがちだったけれど、私は的確で切れ味抜群の彼の批評を聞いているのが好きだったりする。
だからこそ、大学時代の言葉でも、こうして一言一句違わずに覚えていられるというわけだ。
「そうだね?♡ そうだったかも♡ ……ところで、紗世ちゃん?♡♡ また俺の質問スルーするつもりじゃないよね?♡」
わずかに怒気を帯びた声が掛けられるとともに、手首を少しきつめに掴まれた。
「あ、ええっと……。観てほしいものがあるってことは覚えてたよ! 先週の鏑木くんは確か『女性向けのエッチなビデオみたいな感じ』とかって言ってたっけ?」
「うん。大体そんな感じ。……俺の感覚が変じゃなければ、だけどね?」
必要以上に予防線を張る彼は、いつもの根拠のない(ように私には見えるけれど、本人目線ではそんなことはないのかもしれない)自信に満ちた彼とは似ても似つかなかった。
「何それ♡♡ 女性向けだって色々あると思うし、感覚に変とかないと思うよ?♡」
「そうかな?」
「うん♡ それ観終わったら、たくさんイチャイチャしてくれる?♡♡」
交換条件とばかりに、ちゃっかりこちら側の願望もぶつけてみた。――――当然だ。今週はそのために頑張ってきたといっても過言ではないのだから。
「終わったら…………というか、観ながらでもイチャイチャしようよ♡♡ お腹いっぱいでもできるでしょ、そのくらいのことは♡♡」
彼は髪に顔を押し付けて頭皮を嗅いだり(ケアは万全のはずだけど、正直恥ずかしい)、あらわになっているうなじにリップ音つきのキスをしたりと忙しそうだ。
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