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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<42>
しおりを挟む「そっかあ……。俺と紗世ちゃんのドキドキ、お揃いじゃないんだね。残念…………」
ほんの少し口を突き出して、視線は合わせないでシーツに落とす。拗ねた子どもみたいな顔――が出来てたらいいんだけど。
彼女と一緒にいるときは、表情筋の稼働率がものすごいことになる。
他の人といるときの何倍だろう――って計算し始めるのとほぼ同時に気付いちゃった。ゼロには何をかけたってゼロなんだってことに。
「ちなみにどこがどういう風に違うと思うの?♡」
「!」
俺の反応を受けて心を痛めてくれているのか、彼女は視線を彷徨わせ始めた。騙されやすくておまけにお人好しなんて、ますます他のオトコに渡すわけにはいかないなあ♡♡
「言ってみなよ♡♡ 耳の穴掻っ穿って聞いててあげるからさ?♡」
調子づいてからかったら、彷徨っていた視線が俺という一点に注がれた。それ以外は――ええと、『柳眉を逆立てる』って言い回しがしっくり来そうな感じ。
俺が彼女を褒めるときは中身も込みなことが多いから、『可愛い』ってついつい口を衝いて出ちゃうけど、顔立ち自体は美人とか綺麗って言ったほうが本当は合う。
つまり、静かに怒りを募らせているだけで結構な迫力があるってこと。
虎の尾を踏んじゃったかな?♡ いや、この子は全然猛獣じゃないか♡ 『yours』の十二支シリーズ・タイガーモデルを着用してもらう機会だったら、 この先何度でも作るつもりだけどね。
「~~~♡♡♡ 『耳の穴掻っ穿って~』は、聞きたい側じゃなくて聞かせたい側の台詞でしょ♡♡」
彼女は声にならない声を上げるかのごとく唇をもにゅもにゅ動かしたあと、勢いよく言い切った。
羞恥と興奮でいっぱいいっぱいのはずなのに、負けじと言い返してくる気の強さも大好きなんだよね♡♡ 気持ちよくてふにゃふにゃにさせちゃうそのときが、もっともっと楽しみになるからさ?♡♡
「…………あ、そっか!」
再び彼女と向き合ってすぐ、この状況をより楽しむためのアイディアが湧いてきた。
「な、何……!?」
彼女はびくっと肩を震わせた。驚かせちゃったかな。ごめんね?
浮き上がった鎖骨の繊細さに女の子っぽさを感じて唾を飲み込んだあと、我ながら画期的すぎるアイディアを言葉にして彼女にも共有していく。
「俺、紗世ちゃんのお顔大好きだから、見つめ合える場所がベストポジションだと思ってたんだけど……♡♡」
「うん?♡」
彼女はさっきまでぷんぷんしてたのが嘘みたいに期待のこもった瞳で俺を見つめて、話に耳を傾けてくれている。
『天使って天上じゃなくてベッドの上にいることもあるんだなあ』なんて浮かれたことを考えながら、起き上がって、彼女の背後に回り込んだ。
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