yours-夢の罪過-

“mellow time”～いつか夢で～

“mellow time”～いつか夢で～＜31＞

「ぽりねしあん……せっくす…………」

　一時期よく耳にすることがあったような気がするワードを声に出してみたけれど、彼のように流暢な発音は出来なかった。
　
「…………ちょっと♡ 紗世ちゃん？♡ いまのたどたどしい言い方、何？♡♡ もう一回言ってみてよ♡♡」

「え？　ぽりねしあんせっくす？」

　二回目も一回目とほぼ同じで、成長は見られなかった。そこまで横文字に弱いほうではないと思っていたのに。
　
「うんうん♡ いいねえ♡♡ 普段、紗世ちゃんの口から『セックス』って聞くことないから、めっちゃ新鮮♡♡」

　しかし、彼はそれをお気に召したらしく、枕の上の握り拳を開いて笑顔を見せた。このひとのツボは本当にわからない。

「鏑木くんだって言わないでしょ♡ 今、初めて聞いた気がするけど？♡」

「ん……？　そういえば、俺もか！　でも、紗世ちゃんは俺にはもったいないくらい可愛いし、そんな可愛い紗世ちゃんとするんだったら、『セックス』じゃなくて『エッチ』のが合ってる気がして、ついそう言っちゃうんだよね♡♡」

「ちゃんと理由あったんだ♡ でも、ちょうどいいかも？♡♡ 鏑木くんの声で聞く『セックス』、私には刺激が強すぎる……というか、普段から聞いてたらキャパオーバーしちゃいそうだから……♡」

「『セックス』で照れちゃうの？♡♡ いちばん無難な言い方だと思うんだけど♡ じゃあさ、も・っ・と・す・ご・い・言・い・方・したら、どうなっちゃうんだろうね♡♡」

　彼が私の顎に手をかけ、くいっと上を向かせた。

「……も・っ・と・す・ご・い・言・い・方・って……？♡」

　頭の中で、彼の前では言えないような卑猥な言葉たちが押し合いへし合いし始めた。

「そうだなあ……♡♡ いつかエッチしてるときに聞かせてあげるから、そのときまで楽しみにしておいて♡」
　　
　彼はその思考を邪魔するかのごとく、唇を合わせた。

「…………俺たちもやってみる？♡ ポリネシアンセックス♡♡ 俺も未経験だしたことないから、どんな感じになるか見当もつかないんだけど、めちゃめちゃ感度上がるらしいよね♡♡」

　ふたつの瞳は好奇心で煌めいているけれど、私はその提案をどう拒否したものかと考えていた。