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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<30>
しおりを挟む「全裸でも下着姿でも?♡」
彼の視線は胸元と顔を往復している。
「うん……♡」
「じゃあ、次は挿れる前にお尻ふりふりしてもらおっと♡♡ あと、おねだりも一緒にしてもらっちゃおうかな♡♡」
そればかりか、トッピングでも頼むかのように追加の注文がつけられ、要求がしれっとエスカレートしていっている。
「…………それはいいけど、鏑木くん?♡♡」
過激なことをする分には構わないけれど、次回までに妄想が膨らみすぎて収拾がつかなくなっても困る。楽しそうな彼を一旦制止した。
「ん?♡ どしたの、紗世ちゃん?♡♡」
「私たち、今日はもう最後までエッチしちゃうの……?♡♡」
出会ったその日に身体を重ねることにも抵抗のなかった私には一般的な感覚はわからないけれど、付き合って一週間の鏑木くんと肉体関係を結ぶのは時期尚早な気がした。
(『先週は自分からエッチしたい雰囲気出してたくせに』って思われてても仕方ないけど……!)
友人として付き合ってきた月日を合算したとしても――――ではなく、友人として重ねてきた数年の思い出が、かえって私を尻込みさせているのかもしれない。
「逆にしないつもりでいたの?♡ 確かに挿れるだけがエッチじゃないんだろうけど、『お互い初めての恋人で童貞と処女です』ってわけでもないじゃん♡♡ わざわざ前戯とか裸で添い寝するだけで止める理由ある?♡ 俺、紗世ちゃんが好きすぎて焦っちゃってたかな?」
彼は自身の考えを詳らかにしながら、私の気持ちに寄り添おうとしてくれている。
(鏑木くんも私と同じくらい、今日のデート楽しみにしてくれてたんだ♡♡ 一週間、禁欲してくれてたりしないかな?♡♡ いっぱい気持ちよくしてあげたい♡)
取扱説明書が脳内にあるのではないかと疑ってしまうほど、彼は私を喜ばせるのが上手い。
「…………あ! もしかしてポリネシアンセックス希望?♡♡」
回答を差し控えていると、鏑木くんの口からは初出の単語が躍り出てきた。
「ぽり……? 一週間とかかけてするエッチのことだっけ?」
「そう。スローセックスの一種で…………。えーっと、期間は確か五日とかだったかな? でもさ、七日だろうが五日だろうが変わんないよね。最後の日しか紗世ちゃんとひとつになれないの。長いって! それはさすがに!!」
彼は行き場のない感情をぶつけるかのごとく、枕に拳を振り下ろした。振り下ろしたといっても力はほぼ入っておらず、ぽすっという優しい音しかしなかった。
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