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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<12>
しおりを挟む「鏑木くんもしたいの?♡」
「うん♡ 先週はずっと外にいたから、紗世ちゃん不足……。この週末は、紗世ちゃんの体積が減っちゃうくらい堪能させてもらうからね」
宣言した彼の顔を細部まで観察すると、目の下に目立たないけれど隈が出来ていた。――そこに関して言えば、私がではなく睡眠が不足していただけだと思うけれど。
体積が減るというのは、痩せるという意味で取っていいのだろうか。
ダイエットの指標をどこに求めるかは人それぞれだけれど、わかりやすいところだと体重の増減だ。
短期間で体重が減る=痩せたわけではなく体内の水分量が減っただけ――――なんてことは常識だけれど、彼はつまり『たくさん汗を掻くようなことをする』と仄めかしていることになる。
「でも、土曜日の夜とか……♡♡ たくさん充電しなかった?♡」
「したと思ってたんだけどね。…………俺、すごく欲張りなんだ。紗世ちゃんは添い寝だけで一週間保った?」
「……ううん。うちまで送ってもらったあと、すぐ寂しくなって……。この子がいてくれなかったら、鏑木くんに電話してたかも」
先週、鏑木くんに獲ってもらったわんちゃんを抱き締め直す。
この一週間、ずっとこの子を抱いて眠りに就いていた。彼の香りが少しでも残っていることを期待して、顔を押し付けて匂いを確かめてみても、ぬいぐるみの埃っぽい臭いしかしなかった。
「そこは電話してほしかったなあ♡♡ 送ってすぐなら、そんな遅い時間でもなかったでしょ?」
「ごめんね? でも、声聴いたら、もっと会いたくなっちゃうから…………」
「会ったら、前の日の夜みたいなことしたくなっちゃってたかな?♡♡」
「なってたと思う。……けど、私がしたかったのは、どっちかっていうとその続きで……♡♡」
「…………一週間ずっと考えてた?♡」
片腕をハンドルにかけた彼の視線を痛いほど感じる。やけに長い信号――――かと思いきや、駐車が済んでいた。
「俺もだよ♡♡ 人前じゃ絶対にできないこと、今日は明るいうちからいっぱいしようね♡♡」
目指していたレストランに到着したというのに、彼は区切りのいいところまで会話を続行するつもりでいるらしい。
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