yours-夢の罪過-

片喰 一歌

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“mellow time”~いつか夢で~

“mellow time”~いつか夢で~<10>

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「『ていねいな暮らし』?」

 本日の鏑木くんは黒いTシャツを着用していた。
 
 彼にしては落ち着いたセレクトだと思っていたけれど、ちょうどその脇腹のあたりにモーヴピンクの犬のようなシルエットが浮かんでいる。

「…………とはちょっと違うかな? 私に比べたら大分丁寧そうだけど……。えっとね、彼女いない歴二年って言ってたけど、恋人いない期間が長くなるとペット愛に走る人って多いでしょ?」

 お馴染み『yours』の十二支シリーズ・戌年モデルかもしれない。

(私がこの子連れてくるってわかってたから、合わせてくれたのかな?)

 腕の中のわんちゃんを撫でる。私の体温が移ってほんのりあたたかいそれは、もしかしたら本当に生きていて、そのうち動き出すのではないかと思ってしまった。

「ああ、『独身はペット飼ったら結婚出来ないおしまい』とか言うね?」
 
「うん。だけど、『ペットは飼わない主義』ってこの前言ってたから、それはないなって……。でも、鏑木くんは面倒見もよくて『母性大爆発!』って感じのひとだから、母性のぶつけどころ(?)がないとしんどそうだなあとも思ってて」

「…………母性……の、ぶつけ……どころ…………? そんな『弁慶の泣き所』みたいな……」

 困惑した声が届く。

「そう! ちゃんと父性も感じるけど、主に感じるのは母性なの……!! でも、おうちでお花育ててる感じでもなかったし、効率重視の鏑木くん的には食を充実させる方向に行くのかなあって……」

 引かれてしまっているかもしれないのに、言葉が止まってくれない。
 
「睡眠の質を向上させるあげるにも限界があるし…………ていうか、巡り巡って食べたものも影響してくるだろうし。熟睡したいなら、カフェインは午後二時以降は摂らないほうがいいみたいな話も聞くし……」

「…………紗世ちゃんの妄想想像力、すごいな…………」

 彼は『ひゅう』と口笛を吹いた。洋画から飛び出してきたのかと思うほど気障な反応だけれど、彼はそれでも様になってしまう。
 
 そのあとに続いた声は、気のせいでなければ、呆れというより感心に近い響きを持っていた。

「うん。自分でもまずいかもって思うことある……」

「まずい?♡ 俺はいいと思うけどね♡♡ びっくりはしたけど、俺のことそこまで考えてくれてたのが嬉しいし、色々自分で作るのにハマってたってとこは当たってるし。ちなみにだけど、家庭菜園のために土地借りたりはしてないし、マイぬか床も持ってないよ」

 屈託なく笑う横顔はとても眩しくて、サンバイザーが欲しくなった。
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