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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<7>
しおりを挟む「…………鏑木くんって…………」
――――さて、蜂蜜を塗っちゃったみたいなつやつやで甘い唇からは、どんな言葉が飛び出してくるのかな?
必死になって搔き集めた蜜を横取りする外敵を退けようとする働き蜂の大群が遅いかかってくるかもしれない。
「私のこと、パンケーキだと思ってるの?♡」
午前中からヤる気が漲ってる俺を非難する言葉のひとつふたつを覚悟してたはずなんだけど、彼女はぬいぐるみを口元に持ってきて、甘えたような声を出した。
「……ん? パンケーキ……?」
予想していたのと全然違う反応に戸惑って、時間に余裕がある休日の定番メニューを復唱する。疑問を表出する直前になって、点と点が繋がった。
「…………ああ! 蜂蜜もホイップもパンケーキの定番トッピングだもんね♡♡」
蜂蜜やホイップをかけて食べるものといえば――――。
「ふわふわで、ちょっともちもちしたとこもあって、甘くて…………。確かに紗世ちゃんとパンケーキって似てるね♡♡」
お酒の力でぐっすり眠る彼女の柔肌に何度もキスをして、募りに募った愛しさをぶつけるようにそこかしこを舐め回したのが、先週金曜日のこと。
この舌の上には、その甘さが残っている。
「? 知ってるみたいに言うんだね?」
思い出しただけで出てくるよだれが口内を満たすより早く、きょとんとした声が耳に入ってきた。
「!」
危ない危ない。この子にはまだ本当のことを教えてないんだった。
「想像だって♡♡ 抱き締めた感じ……と、キスしたときの感想も混ざってるけど♡♡」
今日中――彼女を抱く前――には洗いざらい打ち明けるつもりでいるけど、だからこそ、それまでは秘密厳守でいきたい。
「…………鏑木くんだったら私のこと食べてもいいよ?♡ でも、それより先に私が作ったご飯、食べてほしいの…………」
「そんなに?♡♡ どうしてそこまで手料理にこだわるの?♡ 惚れ薬でも飲ませようとしてる?♡♡ そんなの必要ないくらい、俺は紗世ちゃんにメロメロなのに♡♡」
「私、普段はおつまみばっかり作ってて……。久しぶりにご飯っぽいもの作ったら、全体的に味付けが濃すぎて、『こんなの鏑木くんに食べさせられない!!』ってなって、一週間特訓したから……♡」
「その成果を見せたいってこと?♡」
包丁の扱いや火加減の問題だったら両手に絆創膏が何枚も貼られてたんだろうけど、彼女の手は先週と同様に美しい。
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