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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<4>
しおりを挟む「確かに全然違うだろうね」
足元を見れば、彼女がいかに今日のおうちデートを楽しみにしてくれていたかは一目瞭然だった。
「でしょ? 贔屓のメーカーとかも違うはずだし、常備してるものだって……」
秋を先取りしているんだろう。上品なミルクティーカラーのネイルを施した指を折り、彼女は例を挙げていく。
俺はこういうのに疎いからなんてデザインなのかわからないけど、ランダムな模様が大理石みたい。
「うん。でもさ、俺んちの冷蔵庫の中身、紗世ちゃんの好きなものいっぱい入ってるって、天才って褒めてくれなかったっけ?」
紗世ちゃんの常備してるものってなんだろう? 脂肪ゼロで高タンパクなヨーグルトかもしれないし、うっかり納豆のパッケージ放置しちゃってても可愛いな。
「褒めたけど……」
でも、それはあくまで普段の中身で、今は俺をもてなすための材料が詰め込まれているかもしれない。
いつ彼女が来てもいいように、ご飯的なものは二の次に、お酒とスイーツに特化した中身に切り替えた俺と同じで。
「…………あ。俺の車、これね。覚えてた?」
そうこうしているうちに、車を停めた場所に到着した。
「私、そんなに忘れっぽくないよ? 鏑木くんのイメージに合うな~って思ってたし」
「ほんと?♡ 嬉しいな♡」
いつもわりと綺麗な状態を保ってるほうだと思うけど、洗車してぴかぴかに仕上げてきた車のロックを解除した。
「……作ってあげたかったお料理に使う材料とか調味料とかが全部揃ってるとは限らないでしょ?」
慣れたように助手席のドアを開けた彼女は、乗り込む前に発したぼやきごと、ひんやりした空気の漂う車内に吸い込まれていった。
なにを言っているのかと思ったけど、ひとつ前の話題の続きか。
「それはそうだね。行きつけのスーパーの品揃えにも左右されるし。そんなに変わったもの作ってくれるつもりだったの?」
エンジンをかけて、ちょっとしたドライブの始まりだ。
「え、どうだろう……? そこまで変わってないかもだけど、鏑木くんち、あんまり調味料揃ってなさそうだったから…………」
この前来たとき、冷蔵庫の中身だけじゃなくて、キッチンの様子もしっかりチェックしてたんだね♡ その抜け目のなさ、推せるなあ♡♡
「…………言われてみれば? 冷蔵庫の中は開けないと見えないからいいとして、目に見える部分ごちゃごちゃさせたくないし、基本的なのしか置いてないな……」
空席だらけのスパイスラックを思い浮かべる。
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