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“mellow time”~いつか夢で~
“mellow time”~いつか夢で~<2>
しおりを挟む「あ! そしたら、模様替えしたお部屋は見てもらえるね?」
ぱっと顔を上げた彼女の言う通りではある。
「そうだね?」
約束を守って迎えに来たから、現在地は先週のデートの最後に何分間か黙ったまま握手を交わしていた問題の場所――彼女の家の玄関の前――だ。
「…………ていうか、びっくりして連絡しちゃったけど、お湯出なくて不便なのってお風呂だけかも? 食べたあとの食器は水でも洗えるし……。どうしよう? お風呂だけ外入りに行って、予定通り、ここでデートする?」
「……ああ! お風呂入れるとこ、近くにあるもんね? 来る途中で見たよ。お客さんも結構入ってたな。ああいう温泉ってこういうときでもないと行かないし、いい機会っちゃいい機会だけど…………」
ヘアセットにメイク、コーディネート。全部がきっと俺の好みに寄せてくれたであろう彼女の全身を眺め回す。
「エッチしたあとにお湯使えないって、相当のデメリットだよ? 水しか出ないお風呂、なかなかきついものがあるからね?」
そう。『経験者は語る』――――ってやつ。
いつのことだったか、俺の家でも前触れもなく給湯器が故障した。季節は夏。確か八月の、夏真っ盛り。
近所に銭湯はなく、友達や知り合いもいなくて、『まあ、夏だし』(※言っておくけど、『真夏だし』と掛けた駄洒落ではない)と自宅でシャワーを浴びようとしたのが悲劇の始まりだった。
滝とか想像してもらったらいいんじゃないかと思うけど、水圧ってすごいじゃん。あれで落ちる汚れもあるけど……。
ほら、食器を洗う前に水張ったたらいにつけ置きしておくこととかあるでしょ。あれと同じでさ、お湯使えばそんなことしておく必要ないわけで。要は油汚れを浮かせる力があるのがお湯ってこと。
だから、お湯と比較しちゃうと、どうしても洗浄力は劣るよね。
それだけじゃないよ。身体をあたためられないってことは、一日酷使した筋肉の緊張を緩められないってことだ。――――あれが地味にきつい。何日か続くと、スリップダメージ受けてる気分になってくる。
高温のサウナ入ったあとじゃない水風呂は、いくら暑がりでプール好きな俺でも拷問に等しかった。お湯が恋しいのと寒さとで震えたもん。まあ、直前のシャワーも水だから、必然か。
ヴァンパイア・マウンテンの入浴設備よりマシだと思って耐えたけど、あれを知らなかったら耐えられなかったと思う。
負けず嫌いが発動して、新しい給湯器取り付けてもらうまで水風呂に入り続けたことも、今だからこそネタに出来てるけど、今後給湯器が故障することがあったら、おとなしく温泉に足を運ぶと決めている。そのくらいしんどかった。
可愛い可愛い紗世ちゃんには、過去の俺と同じ思いを味わわせたくない。そんな気持ちをたった一行に込めたら――――。
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