yours-夢の罪過-

片喰 一歌

文字の大きさ
上 下
90 / 230
仮初恋人遊戯

仮初恋人遊戯<46>

しおりを挟む

「うわ~……。確かにどっちも怖いな……。夜中に目が覚めて鎧武者が俺の顔覗き込んでたら、寝不足決定だもん……。ていうか、ほんとにそんなことあったら、紗世ちゃんに連絡しちゃうかも!」

 暗い廊下の真ん中を肩を寄せ合って歩きながら、冗談めかして言ってみたら――――。

「していいよ? 鏑木くんだったら電話で叩き起こしてくれていいし、泊まりに来てもらっても大丈夫♡♡ いざとなったら、私のこと頼ってほしいな!」

 彼女はどんと胸を叩いた。
 
 ついでに言うと、きらきらした瞳の奥には使命感がめらめら燃えていた。そんな彼女の頼もしさ満点の回答に感心してたはずなんだけど――――。

「……それもそれで寝不足にしちゃうかもしれないけど……♡」

 回答には、どうやら続きがあったらしい。そういうことね♡♡

「…………気持ちは本当にありがたいんだけど、『エッチなこと考えてたらお化けが寄ってこないのは本当か』みたいな実験に、俺のこと巻き込もうとしてない?」

「えへへ♡ わかっちゃった?♡」

 わざと呆れた風な目をしてつついてみると、彼女は舌を出してあっさり白状した。いや、潔いな。あと、その顔、他の男の前で絶対しないでほしい。みんな君のこと好きになっちゃうから。

「バレバレ♡♡ 何年の付き合いだと思ってるのさ♡」

「何年かなあ? 忘れちゃいそうになるけど、私たちって幼馴染だったね?」

 彼女は指を使って計算し始めた。
 
 ――――そう。俺たちの付き合いはなかなかに長い。ずっと一緒ってわけじゃないけど、合計したら片手じゃ絶対に足りないくらいの年数、いいお友達として付き合っている。

「そうだよ?♡ しかも、ただの幼馴染よりずっと運命的かも……♡ なんて、俺は思ってるんだけど♡♡」

 俺と紗世ちゃんの出会いは一、二歳のときだったはずだけど、初対面の記憶はさすがにない。
 
 小さい頃はご近所さんで、お互い好きなものが周囲とずれてたこともあって、その頃もよくふたりだけで遊んでたなあ。
 
 でも、小学校低学年のときに俺が引っ越してそれっきり……かと思いきや、大学の構内で再会を果たして、『これはもう運命だ』と身体にビビビッと電流が走った。あの日のことは一生忘れないと思う。

「言えてる! また会えるなんて思ってなかったけど、いまがいちばん楽しいと思えるのは鏑木くんのおかげ!」
 
 再会してからはわりと頻繁に会ってるし、彼女が真っ先に頼ってくるのはどんなにデリケートな問題だろうと俺。子どものとき以上に仲良くなれてる手応えだってある。本人だってこう言ってるし。

「……ありがとう。嬉しいよ」
 
 他の友達には彼女のことをちゃっかり『親友以上恋人未満(信頼できる男友達には、それに加えて未来の奥さん)』として紹介してるくらい。
 
 こんなのもうとっくに恋始まっててもおかしくないと思わない?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...