yours-夢の罪過-

片喰 一歌

文字の大きさ
上 下
90 / 171
仮初恋人遊戯

仮初恋人遊戯<46>

しおりを挟む

「うわ~……。確かにどっちも怖いな……。夜中に目が覚めて鎧武者が俺の顔覗き込んでたら、寝不足決定だもん……。ていうか、ほんとにそんなことあったら、紗世ちゃんに連絡しちゃうかも!」

 暗い廊下の真ん中を肩を寄せ合って歩きながら、冗談めかして言ってみたら――――。

「していいよ? 鏑木くんだったら電話で叩き起こしてくれていいし、泊まりに来てもらっても大丈夫♡♡ いざとなったら、私のこと頼ってほしいな!」

 彼女はどんと胸を叩いた。
 
 ついでに言うと、きらきらした瞳の奥には使命感がめらめら燃えていた。そんな彼女の頼もしさ満点の回答に感心してたはずなんだけど――――。

「……それもそれで寝不足にしちゃうかもしれないけど……♡」

 回答には、どうやら続きがあったらしい。そういうことね♡♡

「…………気持ちは本当にありがたいんだけど、『エッチなこと考えてたらお化けが寄ってこないのは本当か』みたいな実験に、俺のこと巻き込もうとしてない?」

「えへへ♡ わかっちゃった?♡」

 わざと呆れた風な目をしてつついてみると、彼女は舌を出してあっさり白状した。いや、潔いな。あと、その顔、他の男の前で絶対しないでほしい。みんな君のこと好きになっちゃうから。

「バレバレ♡♡ 何年の付き合いだと思ってるのさ♡」

「何年かなあ? 忘れちゃいそうになるけど、私たちって幼馴染だったね?」

 彼女は指を使って計算し始めた。
 
 ――――そう。俺たちの付き合いはなかなかに長い。ずっと一緒ってわけじゃないけど、合計したら片手じゃ絶対に足りないくらいの年数、いいお友達として付き合っている。

「そうだよ?♡ しかも、ただの幼馴染よりずっと運命的かも……♡ なんて、俺は思ってるんだけど♡♡」

 俺と紗世ちゃんの出会いは一、二歳のときだったはずだけど、初対面の記憶はさすがにない。
 
 小さい頃はご近所さんで、お互い好きなものが周囲とずれてたこともあって、その頃もよくふたりだけで遊んでたなあ。
 
 でも、小学校低学年のときに俺が引っ越してそれっきり……かと思いきや、大学の構内で再会を果たして、『これはもう運命だ』と身体にビビビッと電流が走った。あの日のことは一生忘れないと思う。

「言えてる! また会えるなんて思ってなかったけど、いまがいちばん楽しいと思えるのは鏑木くんのおかげ!」
 
 再会してからはわりと頻繁に会ってるし、彼女が真っ先に頼ってくるのはどんなにデリケートな問題だろうと俺。子どものとき以上に仲良くなれてる手応えだってある。本人だってこう言ってるし。

「……ありがとう。嬉しいよ」
 
 他の友達には彼女のことをちゃっかり『親友以上恋人未満(信頼できる男友達には、それに加えて未来の奥さん)』として紹介してるくらい。
 
 こんなのもうとっくに恋始まっててもおかしくないと思わない?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

10のベッドシーン【R18】

日下奈緒
恋愛
男女の数だけベッドシーンがある。 この短編集は、ベッドシーンだけ切り取ったラブストーリーです。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...