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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<41>
しおりを挟む(……今にも動き出しそうな感じだもんね。私も脅かし役の人より、ああいうお人形のほうが怖いと思う)
怖いものは美しいひとで上書きしてしまうに限る。
「でも、こんなところにお化け屋敷あるなんて知らなかった! 結構、本格的な感じだし……。鏑木くんは知ってたの? そうじゃないとしたら、昨日の夜に調べてくれたりした?」
首ごと向ければ、そこには予想とは少々異なる表情の彼がいた。
口角を無理矢理上げて、どことなく緊張感を漂わせている気がするけれど、きっと気のせいだろう。
連れてこられた側であればともかく、連れてきた側が苦手なんて、まさかそんなはずはない……よね?
「んー……。うっすら知ってた感じかな? ……っていっても、昨日はすっかり忘れてたんだけどね! 紗世ちゃんが可愛すぎて正直それどころじゃなかった♡♡」
「ほんとおだて上手なんだから」
不意打ちの褒められにも少しは慣れてきて、軽く流せるようになってきた。
だけど、いつまでも照れてはにかむ女の子のほうが可愛いかな。路線変更も今なら間に合うし、ちょっと検討してみよう。
「ほんとのことしか言ってないよ?♡ 帰ってから思い出して、『ちょっと行ってみたかったな~』って。紗世ちゃん、ホラーは平気だったよね?」
「うん。ものによるけど、大体平気だよ。……パニックホラーはあんまり得意じゃないけど。特にゾンビたちがわーって出てきて襲ってくる感じのとか」
「さっきのゲーム、完全にそれじゃん。しつこいかもだけど、無理矢理付き合わせてほんとごめんね……」
「あ、そうじゃなくて! 言葉足りなくてごめんね! 全然無理矢理じゃなかったし、ゲームだったら別にいいの。寄ってこられるのは怖いけど、こっちからも攻撃できるから! 実際にやってみるまでは怖かったけど、ゲームだったら意外と大丈夫かもってわかったの。鏑木くんのおかげだね」
と言うと、数秒前までがっくりと肩を落としていたのが嘘みたいに、彼はしゃっきり背筋を伸ばした。
「私が苦手なのはゾンビ映画だよ。対抗手段なくて、観てるしかないから…………」
「結構アグレッシブなんだね? ますます惚れちゃうなあ♡♡」
「ありがとう。……そろそろ入らない?」
軽く躱しちゃって申し訳なかったかな。だけど、私は俄然、目の前のお化け屋敷が楽しみになってきていた。
あれだけ頼もしかった彼のことだ。シューティングゲームのとき以上の勇姿を見せてくれるだろう。
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