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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<35>
しおりを挟む「そっかあ。初めてでそれって、もっとすごいね!」
スーパープレイを目の当たりにしたら、何円使ったかとか自分のUFOキャッチャーの腕前なんてどうでもよくなってしまった。
「そうかな? でも、アームもわりと強かったし、俺の実力がどうって話でもないような……」
「アーム! 大事だよね! 田舎のゲーセンとかアーム弱くて本当に無理ゲーって感じのところあるけど、確かにここのはいい感じだったかも。……それなのに、私は……」
「そっか。場所によって違うことって色々あるけど、ゲーセンのアームの強度まで違うんだね。都会と比べてお客さん自体が少ないっていうのも原因なのかな?」
ゲーセンの所在地によるアームの強度差の話にぴんときていないということは、嘘ではなかったと判断していい。そもそも嘘を吐く必要もないことだけれど。
「それもありそう! あとね、都会のゲーセンの店員さんのほうが親切なの! 手間取ってたら、声掛ける前に向こうから『プライズ移動させましょうか?』って言ってきてくれることが多い気がする」
「それは治安の問題かな……。人が多いほうが変な人も多いだろうし、あとちょっとのところに来てる景品を落とすために筐体ドンドン叩かれて壊されるより、取りやすい位置に動かして素直にゲットさせてあげるほうがずっと安上がりだもん。その対応がきっかけで、リピーターになってくれるかもしれないしね!」
「確かにそうかも。でも、そういう裏技みたいなのも一切なしで一発ゲットだもんね。ほんとにすごいと思う!」
なんでもすぐに分析を始めるところは、頭がよくてゲームが好きな彼らしい。
「ありがとう♡ でも、いちばんは、直前に紗世ちゃんのお手本見てたからじゃないかな?♡ ありがとね、先生?♡♡」
小首を傾げた彼には、まだまだ学ランも似合いそうだ。でも、育ちのいい感じのブレザーも同じくらい似合いそう。
こんなことを考えてしまうということは、そう呼ばれることのよさに目覚めてしまったも同義で――――。
「…………鏑木くんに『先生』って言われるの……すごく不思議な感じだけど、なかなか……♡♡」
「いいでしょ?♡ わかってもらえて嬉しいな♡」
照れているところに彼が近付いてきて、何をするつもりかと思ったら、頬にふわふわなものが当てられた。
「? …………!」
今、彼が獲ったばかりの黒いわんちゃんにキスされているのだと気付くまでに、少しかかった。
「……はい。あげる♡♡ 『今日からよろしくね!』……だってさ♡」
呼吸とまばたき以外のことを忘れて佇んでいたら、彼はその黒いわんちゃんを私の腕に押し付けてきた。
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