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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<32>
しおりを挟む「俺の趣味に付き合わせちゃってごめんね。でも、協力プレイできて楽しかった! 怖いのに頑張ってくれて、ほんとありがとね」
俺たちはキリのいいところでシューティングゲームを終えたあと、ゲーセンの中を彷徨きながら感想を言い合っていた。
こんなふうに、何かを一緒に体験したあとに、そのとき湧き起こった感情を共有する時間って幸せだよね。
ひとつも取り落とさないように言語化していく過程で、聞いてくれてる相手がそれに共感してくれて、そこからわーっと感想を言い合って……みたいな時間。
むしろ俺はそっちがメインイベントだと思ってるから、どこに行ったって全力で楽しめる自信はあるんだけど……。
今度、映画も一緒に観たいなあ。映画館行ってもいいし、めぼしい作品が上映してなさそうならおうちで観てもいい。
どこで観ても、上映時間のうち半分くらいは映画に集中したり感情移入したり忙しそうな彼女のこと見ちゃうと思うけど♡♡
「教えながらだとやりにくかったんじゃない? 私のほうこそごめんね」
「そんなことないよ。俺も久々だったから言うほど役に立ててなかったんじゃないかと思うし、最後のほうなんてめちゃくちゃ成果出てたじゃん! それより、ちゃんと楽しめた?」
最初から最後までちらちら様子を窺ってたけど、彼女はボスのモンスター以外を直視することはなかった。
そのボスのモンスターのことだって、急所を狙うために嫌々見てたのかもしれないしね。
「もちろん! 最初は怖かったし、全然わからなかったけど、鏑木くんが色々教えてくれたおかげで楽しかったよ。ありがとう! もうちょっと遊んでたかったなあ」
そう言って伸びをした彼女の言葉がなによりの報酬だ。
ついでみたいに訊いたけど、実のところ、それがいちばん心配だったから安心した。
「そっか♪ さっきのシリーズなら、わりとどこにでも置いてあると思うし、また今度見かけたら一緒にやろうね。最後まで人いなかったら、ラストステージまで全クリ目標で!」
――――そう。
さっきは『キリのいいところ』って言ったけど、事実は少し違ってて、ラストステージに突入したあたりで後ろに人が並び出したんだよね。
だから、それ以降は回復薬を使用しないで、彼女のライフがゼロになるまで(……だと気を遣わせちゃうから、手を抜いて同じくらいのタイミングで俺のほうもゾンビに攻撃させてライフ削ってった)プレイしたところで、今回のチャレンジは終了。
だけど、彼女と協力プレイ出来ただけでも大満足だったし、好きなシリーズの最新作ってだけあって懐かしい部分とパワーアップした部分の両方が楽しめたから、消化不良なんてことも全然なかった。
「リベンジだね! 今度はもっと機動力高い人選ぼっと」
「いいと思うよ。紗世ちゃんもだんだんこっち側に染まってきたね~♪」
隣からゲーマーっぽい感想が聞こえてきた。この調子でもっと俺に染まってくれないかなあ。
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