yours-夢の罪過-

仮初恋人遊戯

仮初恋人遊戯＜29＞

「そうだなあ……」

　先生モードをONにして考える。この子に合う攻略法ってどんなのがありそうかな？
　
　隣をもう一度見ると、意外や意外、彼女は画面を真っ直ぐ見つめていた。

　シナリオ上、同じシリーズの他の作品と比べてもゾンビの数が多いみたいだし心配だったんだけど、見てるうちに少しは慣れてきたのかな？　
　
　荒療治感は否めないけど、結果オーライってやつかな。……まあ、慣れてても進んで見たい造形ではないか……。

「普通の雑魚敵だったら、基本頭狙ってったら弾の節約になると思うけど、狙いやすい部位とこ狙ってくれたらいいよ。途中で結構アイテム拾えるから、残数はそこまで気にしないで平気だしね。どこでも当たればダメージ入るし、俺もカバーするから」

　『ひと肌脱いじゃおうかな』くらいの軽い気持ちで当たるはずが、気付けば諸肌を脱いでた。せっかくならいいとこ見せたいし、少しでも『かっこいい』って思われたいもんね。

「ライフもそんな神経質に管理しようとしなくていいよ。弾だけじゃなくて、回復薬も多めに置いてくれてるからね。ヤバそうになったら教えるし、隙を見て多めに渡しとくよ」　

「鏑木くん……めちゃめちゃかっこいいね……！」

「ありがと♪」
　
「あっ、違うの！！　普段からかっこいいけどね？　頼りになるなあと思って……♡」

　勘違いじゃなければ、彼女は昨日あたりから俺のことを『好きな男を見る目』で見てくれてる。

　でも、今の視線にはもっと性的なニュアンスが多めに乗っかってるというか、身も蓋もない言い方しちゃうと『オスとして見てる』感がすごくて、こんなの当てられないほうが無理だよね？♡♡
　
「そっかそっか♡ ……あ、狙うといいポイントの続き、話していい？」

「うん。お願い！」

　でも、次の瞬間にはもう、彼女は恋する乙女モードをOFFにして、真剣な表情で画面に向かっていた。

「ボスにもヘッドショットは有効だし、普通のゾンビと同じでダメージ多めに入るけど、急所自体は心臓とかってこともあるんだよね。だから、紗世ちゃんがさっき言ってたのは大正解♪」

「そうなんだ！？　覚えとかなきゃ！　心臓以外だと、どうなるんだろ？」

「心臓以外か。どこかって言われると……」

　それなら俺も応えなきゃって思うんだけど、何年もブランク空いてるからなあ。

　一面ボスにダメージを与えながら、必死に記憶の糸を手繰り寄せる。このゲームの特徴は、確か――――。