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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<26>
しおりを挟む「……それとも、もう俺とはそういうことしたくなくなっちゃったのかな。だったら、残念だけど仕方ないか……」
他にもいくつか、彼女と彼氏彼女の距離感で接してみて初めてわかったことがあって――――。
そのうちのひとつとして挙げられるのが『この子との駆け引きは特に、引き際の見極めが重要になってくるらしい』ってこと。
具体的には一回思い切って押して、そのあとすぐに引いてみるのがちょうどいい塩梅で、今はその仮説を立証するために、しゅんとした顔で残念そうに呟いたところ。
「ううん! したいよ♡♡ したい…………けど……♡♡」
彼女は思った通りに自分の気持ちを打ち明けてくれた。
こんな小手先のテクニックを使ったのが申し訳なくなっちゃうくらいに正直でシンプルな回答だ。
「お名前呼ぶのは、まだ恥ずかしい……♡ ていうか……何回も連呼しなくても、もうなんの話かわかったから…………っ♡♡」
頬だけじゃなくて耳のほうまで染まっちゃってる。
だいぶ想像力が豊かなのは君も同じみたいだから、ベッドインしたら言葉でもたくさん辱めないといけないね♡♡
「先生プレイのときは『鏑木先生♡』でも『先生♡』だけでも好きにしてくれたらいいと思うけど、それ以外のときだったら、『千尋♡』って呼んでほしいんだけどな……♡♡」
今の俺は先生でもなんでもないけど、来るべきときのために今から教育しておくのも一手かもしれない。
「え? 呼び方気にするんだ? 意外!」
「そうだよ?♡ だから、俺のほうもなるべく希望に副いたいと思ってるんだよね。紗世ちゃんはなんて呼ばれたい?♡ いつもみたいに『紗世ちゃん♡』がいい?♡♡ それとも、エッチのときだけは呼び捨て希望?♡♡」
無邪気な彼女はただそれだけの質問にも照れて、ついに口を覆った。
いい感じにピン留めされてた視線も、助けを求めるみたいにあっちこっちに彷徨い出したから、顔をもっと近付けて、視線も意識も強引に独り占め。
「…………え♡ ええっと……♡」
「ああ♡♡ 急いで答え出さなくてもいいよ?♡ そのときになったら教えてくれれば♡ でも、それまでにちゃーんと考えておいてね♡♡」
「……うん。そのときは、ちゃんと言うね?」
頷いた彼女の中では、すでに明確な答えが出ているのかもしれない。
そう遠くないうちに来るであろうそのときを楽しみに、にっこり笑って頷き返した。
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