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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<19>
しおりを挟む「鏑木くんの考えてくれたのはどれも全部可愛かったし、着たいなって思えて……。これからも毎シーズン見立ててほしいくらい!」
よく見たらほっぺが赤くなってる気がする。外暑かったから、まだ熱も完全には引かないよね。
……なんて。俺だってそこまで鈍感じゃないから、理由がそれだけじゃないことはちゃんとわかってるよ。
「ほんと?♡ 俺でよければ見立てるよ♡ 買い物も付き合うしさ♡♡」
「いいの?♡♡ じゃあ、今度秋物見に行くときもついてきてくれる?♡」
「OK! ご飯のときにスケジュール調整しようね」
ちゃっかり次のデートの約束を取り付けて、肩に掛かったカーディガンに視線を落とす。
いかにも女の子って感じの甘めなデザインのそれは彼女によく似合っているし、文句をつけたいとかじゃない。
でも、ガーリーでスウィートなイメージを背負っている子だからこそ、カジュアルでボーイッシュなデザインも映えるんじゃないかって俺はひそかに思ってる……というか、『yours』の服を着てほしいだけなんだけどね。
昨日か一昨日のあれ? あれは彼女の意志じゃなかったでしょ。
欲を言えば俺の好きなものを好きになってほしいし、そのうえで着てほしいんだよ。
目下の目標は全身『yours』のペアルックで歩くこと(だし、イチャイチャしながらどれ着るか選びたい)なんだけど、さすがにそれは難しそうだから……。
フーディーだけお揃いで買って着るくらいが現実的な落とし所になってくるのかな?
「……というか、話してたら気付いたんだけどさ、先生って学校の先生だけじゃなかったね♡♡ お医者さんとかもありえるし♡ ってことは、ドクターとナースとかだってありだよね♡♡」
「えっと……? 鏑木くんは『先生』って呼ばれたいの?」
ようやく目が合った彼女は、困惑気味の上目遣いで確認を取ってくる。
一回聞けただけでも儲けものだと思ってたのに、二回目があるとはね♡ 望外の喜びってやつかな?
<紗世side>
「どうなんだろうね?♡♡ 今まで一度もこんなことなかったんだけど♡ 紗世ちゃんに『先生♡』って言われたとき、かなり危なかったのは本当♡」
「…………危ない……?」
「……ほんとは薄々勘付いてるんじゃない?♡♡」
彼は本当に人の――私の、かもしれないけれど――気を引くのがうまい。その発言にこそ危険な香りを感じたけれど、好奇心には抗えなかった。
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