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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<16>
しおりを挟む<紗世side>
「ゲーセンとか久しぶり!」
到着した先は、少々意外だったけれど、とても懐かしい場所だった。
「俺も」
――――とはいっても、プリクラくらいしか馴染みがないし、そのプリクラも友達に誘われてよくわからないままに利用していた経験しかない。
でも、撮影したあとに可愛いスタンプを押したり、落書きしたりするのは、わりと楽しんでいた記憶がある。
最後に撮ったのは、つけまつげがおまけとしてついてくる機種があった頃だけど、今はどのくらい進化してるのかな?
噂では、昨今のプリ機にはものすごい機能が搭載されていて、別人みたいに加工できるみたいだけど……。
「ん?♡ どしたの?♡」
ちらりと隣の彼を見上げれば、少し身を屈めてくれた。
ふとした瞬間に溢れる優しさももちろん大好きだけれど、この身長差だからこそわかる斜め下からの彼をもう少しだけ堪能していたかったから、本人には申し訳ないけれど、少し残念だった。
元から非の打ち所がない完璧なお顔の鏑木くんとなら、プリクラではなくスマートフォンのインカメラで自撮りしたほうがよっぽど満足度の高い写真が撮れそうだ。
私自身の映りはともかくとして。
ていうか、ちゃっかりツーショット撮ろうとしてるなんて、さすがに図々しすぎるんじゃない!?
「あ……。ごめんね、じろじろ見ちゃって。鏑木くん、あんまりゲーセン行ってるイメージないから意外だなあと思って」
「そう? 確かに最近は全然行ってなかったな。見慣れない感じの筐体も結構あるけど、涼しさは変わってなくてよかった♪ 着く前になって、『節電してて涼しくなくなってるかも』って不安になっちゃったんだよね」
「そっかあ。でも、もしそうだったとしても、他のところ行けばいいだけだし、ちゃんと涼しかったから、鏑木くんはやっぱり天才だね! ……でも、最近来てないって言ってたのに、よく思いついたね?」
「高校の頃、よく友達と映画館に涼みに行っててさ。同じ施設の中にゲーセンもあって、そっちも涼しかったな~って思い出したんだよね」
当時から、みんなに好かれていたんだろう。瞳を眇めて学生時代の思い出を語る彼は、薄暗い空間でも眩しく見えた。
「そうなんだ! それで…………」
またひとつ彼に詳しくなれたと喜ぶ反面、一緒にいたのが本当に友達なのか疑う気持ちも多少はあった。
問いただしたかったけれど、面倒な女なんて思われたくないし、第一、私たちはまだ正式にお付き合いしているわけではない。
「それにしても、本当に涼しいね?」
肌を撫でていった人工的な風は、火照った肌には心地好いはずなのに、胃の腑に冷たいものが落ちた。冷やしすぎたお水を一気飲みしたときみたい。
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