yours-夢の罪過-

片喰 一歌

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仮初恋人遊戯

仮初恋人遊戯<15>

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「最高の褒め言葉もらっちゃった♡ ありがとう♡」
 
「でも、優柔不断なのって、いちばん困るよね? せめて何をしたいかだけでも提案できたらいいんだけど……」

「鏑木くん? 何してるの?」

 『この隙にキスしちゃおうかな』なんて企んでたけど、直前でばちりと大きな瞳が復帰して、そのままの距離で見つめ返してくるものだから。

「…………えーっと。……ああ、そうだった。俺からはまだだったなあと思ってさ。おはようのキス……♡♡」

 迷った挙句、キスを強行したけど、一度じゃ足りなくて、何度もさらさらの肌に口付けた。

「ん♡ ふふ、擽ったいよ♡♡」

「どう?♡ 何かいい案は浮かんだ?♡」

「それがまだ何も…………」
 
「…………そうだ! 鏑木くんは行きたい場所ない?」

 尋ねてきた彼女の声と表情は、数秒前に比べて明るい。少しは元気を取り戻してきたかな?
 
「俺? 色々思い付くけど……。今日も暑くなるみたいだから、片っ端から涼しくなれることしてくのとかは?」

「涼しくなれること? かき氷食べに行くとか?」

 彼女の顔がもう一段階明るくなった。

「おー、かき氷もいいね!」
 
「あ……あれ? 違った?」

 ――――かと思えば、またしても自信なさげに見上げてくる。感情の切り替え早いな。

 この既視感はなんなんだろうと思ってたけど、カメレオンのお友達がいる髪の長いお姫様かな?
 
「俺が考えてたプランにはないけど、めっちゃいいと思うよ。かき氷! グラニテとかソルベとかとも別物だし、今の季節に食べるのがいちばん美味しいよね」

「…………もしかしてだけど、一緒に食べたい?」

「大当たり! よくわかったね?」

「かき氷って、普通盛りが大盛りみたいな感じで、ひとりで食べるにはちょっと多いイメージあるし、なんとなく鏑木くんの考えそうなことがわかってきた気がして…………って、何様って感じだよね!? ごめんなさい……!」

 どうやら彼女の中で俺は『何でもシェアして食べたい男』になっているらしい。
 
 ちょっと違うといえば違うけど、あながち間違いでもないし、わざわざ否定することでもないか。

「嬉しいよ?♡♡ 俺のことわかってくれてるの♡ でも、紗世ちゃんにはもっともっと俺のこと知ってほしいし、俺にも紗世ちゃんのこともっともっと教えてほしいな♡」

「うん♡」
 
 ひとつ頷いた彼女にキスをして、問いかけのために今一度口を開いて。
 
「そんなわけで、今日は納涼デートに決定でいいかな?」
 
 もうひとつ頷いた従順な子羊ちゃんには、少しだけ深いご褒美のキスをあげた。
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