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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<12>
しおりを挟む<千尋side>
「ほとんど一日中ショッピングしてる感じだったけど、退屈しなかった?」
何気ない風を装ったけど、背中には変な汗が伝っていた。着替える前でよかった。
デートの感想聞くのって、意外と勇気がいるね。それだけ本気ってことなんだろうけど。
俺は紗世ちゃんと一緒にいられるだけで満たされるし、たぶんだだっ広い公園をお喋りしながら歩くだけでも楽しめたと思うけど、紗世ちゃんもそうだとは限らない。
アフターファイブも休日も予定ぎちぎちに詰まってそうだし、行きたい場所なんて常に数え切れないほどあるだろうから。
二種類の同じ香りが重なって強くなっているように、俺たちの想いも重なっていたらいいのに。
「まさか! 鏑木くんの好きなものもたくさん知れたし、一日あっという間だったよ。楽しくなかったら、そんな風に思わないでしょ? それに、退屈だったら、今、ここにいないっていうか…………。途中で自分のおうち帰ってたと思うよ!」
もっと希望聞いてあげたほうがよかったかもって無限に落ち込みそうになったけど、彼女はあっけらかんと言い放った。
「あはは。結構はっきりしてるんだね」
「好きでもないのに思わせぶりなのはずるいと思うし、私、興味ない人に時間割けるほど優しくないもん……♡」
流し目で微笑む彼女が擦り寄ってきた。
期待していいんだよね? こんなの『あなたに興味あります』と同義だもんね?
小悪魔な言い回しも許そうって気になっちゃうから、本当にずるいよなあ。
<紗世side>
「……今日ね、ほんとはしなきゃいけないことあったけど、鏑木くんと一緒にいたかったから、ここにいるの……。二日連続で泊めてくれて、ありがとね」
告白の返事は待たせてしまっているけれど、少しでも好意を伝えられればと切り出した。
「そうだったの? 俺は選んでもらえて嬉しいけど、そっち行かなくて平気?」
すると、彼は心配そうに見つめてきた。
中途半端に濁したせいで勘違いさせてしまったみたい。こうなったら本当のことを打ち明けるしかなさそうかも。
「…………えっと。誰かと約束してたとか、どこか出掛けなきゃいけない場所があるとかじゃなくて。そのう……私、平日は元気なくて、洗濯溜めちゃってて……。いつも週末にまとめて洗ってるんだよね」
誤解は解きたいけれど、怠惰な本性をさらけ出すのは気が進まなくて、ごにょごにょもにょもにょしてしまうせいで、彼が顔を近付けてきた。
ちゃんと聞こうとしてくれて嬉しいけど、話題が話題なだけにいたたまれない。
水回りも綺麗に保っている彼はきっと、燃えるごみをうっかり二回連続で出し忘れたことのある私なんかとは対極のタイプといっても過言ではないと思うから。
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