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仮初恋人遊戯
仮初恋人遊戯<10>
しおりを挟む<千尋side>
「…………驚いたな。度胸あるね♡♡」
目を覚ました彼女の様子を窺っていたら、まずスマートフォンを探すような動きをしたあと、すぐに諦めたように脱力して――――。
ちょっとしてからまた腕を伸ばしてたけど、届く範囲に置いてないことを思い出したのか、おとなしくなって俺の腕の中に戻ってきたときは、可愛さのあまり変な声が出そうになって大ピンチだった。
そして、しばらく鼻をぴったりくっつけて匂いを嗅いでいたかと思えば、おもむろにTシャツをずり上げて、なんと自慰に突入してしまった。
『よく寝てるって確認が取れたら、キスくらいはしてきてくれるんじゃないかな』みたいな下心は確かに持ってたけどさ。
「確かに限界っぽかったけど、まさかひとりでおっぱじめちゃうとはなあ……♡」
名前呼び出したときなんかは、起きてることに気付かれないか気が気じゃなかったけど――――。
「普段から下の名前で呼んでくれていいのに♡ 敬称もいらないし、そのほうが楽だと思うんだけど♡♡ 紗世ちゃんは、いつになったら『千尋』って呼んでくれるつもりでいるのかな……♡」
俺と違って、寝ている相手のカラダを勝手に使う子じゃなかったことが幸いして、狸寝入りはばれなかったみたいだけど、起きそうな演技くらいはしてもよかったかも。
焦って隠蔽工作する彼女なんて、可愛くないわけないもんね♡♡
「今度こそは、ふたりとも起きてるときに気持ちよくなろうね♡♡」
身勝手すぎる台詞に苦笑いを浮かべ、そっと頭を撫でる。じんわり浮かんだ汗は、先ほどの行為の名残だろう。
「起きたらどこに行こうか? 俺はずっとここにいてもいいけど、まだお返事もらってないし、二度目のデートだし……♡ 出来ればお外行って、今しか出来ない健全なデートしておこうね♡♡」
眠り姫相手に話をしていると、いやらしい香りに包まれていることに気が付いた。
「たぶんだけど、一回寝てからはデートの締めに毎回することになると思うし♡♡」
今まで気にならなかったのが不思議なくらい。身動きの取れない彼女は換気すらできないことなんてわかりきってたのにね。
「起きる頃には消えちゃってるかな、この匂い。今のうちに堪能しておかないと……♡ ……お愉しみのところを直接見られずに済んだとしても、こんなエッチな匂いが残ってたら言い逃れできないと思うんだけど、どう誤魔化す気でいたんだろうね♡♡」
寝入ったばかりの彼女が自身を慰めるのに使っていた指は、涙と似た味がした。
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