yours-夢の罪過-

仮初恋人遊戯

仮初恋人遊戯＜5＞

　この子はどこを舐められる想像してるんだろうね♡ あんなところとかこんなところとかかな？♡♡

「腋とか足の指の間とかも？」
　
　軽い調子で尋ねたら――――。

「え……っ？　腋…………に、足の指…………！？　私はいいけど、そんなとこ舐めて平気？」

　可愛いお顔が一瞬だけ引き攣った。引かれちゃったかな？

「舐められたことない？　腋と足指は……まあ、ちょっとアブノーマルかもだけど、お胸の先っぽとか女の子の大事なところとかだったらあるんじゃない？」
　
「ないよ！　あるわけない！」

　食い気味に否定してきた彼女の頬は、真っ赤に染まっていた。
　
　嘘ではなさそうだけど、それはそれで複雑。
　
　どんな理由があっても嘘を吐かれるのは嫌いだけど、こういう場合は恥ずかしくて嘘吐いてたってオチがついたほうがずっといい。
　
　女の子の負担考えるなら指より舌で慣らしたほうが絶対いいのに、経験豊富なはずの彼女が一回も舌で愛撫されたことがないなんて、大切にされてきてないみたいで。

　思い過ごしだったらいいんだけど……。

「…………そっか♪　じゃあ、期待しててね？♡♡ 最高に気持ちよくしてあげる♡」
　
　暗い気持ちを追い払うために唇同士を合わせても、もやついた気持ちが完全に消えることはなかった。
　
「明日に備えて、そろそろ寝たほうがいいね。ぎゅーされながら寝るのと腕枕、どっちがいい？♡」

「腕枕も好きだけど、ぎゅってしててもらいたい……。鏑木くんの腕の中、安心するの♡♡」
　
　せっかく照明を落としたのに、薄闇の中では双眸が爛々と輝いている。

「おめめ閉じないと、寝れないんじゃない？♡」

「でも、もうちょっとお喋りしてたいな……」

　おやすみのキスでもねだるつもりかと思ったけど、違ったみたい。

「寝なくて大丈夫？」

「眠い…………けど、まだ寝たくない……」

「そんなにしたい？♡♡」

　冗談まじりに訊いたけど、したくなってるのは俺のほうかも。

「したいけど、今日は頑張って我慢するもん♡♡ そうじゃなくて…………寝ちゃう前に、昨日のこと聞きたくて」

「昨日のこと？」　

「うん……。鏑木くんは私がショック受けると思って隠してくれてるのかもしれないけど、ちゃんと教えて……？」

「『ちゃんと』って？　やっぱり信じられない？」

　眠そうな目を必死に開けて尋ねてくる彼女に負けそうになったけど、努めて冷静に返した。

　信じられないも何も、『関係を持った』ことを除いて、ほとんど全部が嘘なんだけどね。
　
　もちろんずっと隠したままでいるつもりはないよ。かといって、今ここで真実を語ろうなんて気はこれっぽっちもないけど。