41 / 171
親友転序
親友転序<22>
しおりを挟む迷いに迷った彼女が最終的に手に取ったのは、白桃のアイスだった。
蕩けるような恋色のそれは、ねっとりした歯触りとこっくりした甘さがハーモニーを奏でる逸品で、大勢の人の恋心の美味しい部分だけを抽出して作ったみたい。
そのままじゃ味気ないかなと思って、旅行先で彼女に似合いそうだとほとんど無意識に購入してしまったサンデーグラスに盛り付けたのもよかったのかも。
思った以上に喜んでくれた彼女は、わざわざ許可を取って、それを写真に収めていた。
SNSにUPしてくれたって構わないんだけど、この子のアカウントは――少なくとも教えてもらったのは――見る専門みたいで、通知のたびに見に行っても何も投稿されていない。
記念すべき一枚目にして、ほぼ嗅がせでしょって感じの匂わせしてくれたら、一番乗りでいいね押すのに。
舌に残る桃の風味もわずかになってきた頃、並んで歯を磨いたら、退治されたはずの甘さがよみがえってきたのは、まだ見ぬ未来を予感させる光景だったからかな。
およそ十分後。俺たちは薄い掛け布団にくるまって、見つめ合っていた。
『せっかく歯磨いたのに、いつまでもうだうだしてると目が冴えてきちゃう』なんて言い出したから、それに合わせて早々にベッドに入ることにしたんだけど、誘われてるのかそうじゃないのか、いまいち判然としない。
今夜は添い寝だけの予定だけど――――君が望んでくれるなら、その限りでもないかもね?
「イチャイチャしながら寝るのって幸せだよね」
というのは、こちらを見上げる彼女の言葉だ。
でも、君の場合、エッチして寝落ちしちゃうことがほとんどなんじゃないの?
「そうだね。ぎゅーってくっついて甘えたり甘えられたりしてると、もっともっと好きになっちゃう気がする♪」
だけど、そんな疑惑を口に出すわけにもいかないから、腕の中の存在を確かめるように抱き締めて、幸福感で自分を満たす作戦に打って出た。
「せっかくお部屋涼しくしてくれてあるのに、また汗掻いちゃうよ?」
ここに来る前に確認したんだけど、『彼氏の距離感で大丈夫』らしいから、寝転がる前から彼女にべたべたひっついて過ごしてたりする。
「別にいいよ。こんなに近くにいて、紗世ちゃんもいいって言ってくれてるのに何もしないでいるなんて無理だもん……。すごく癒されるし。お願い。ぎゅーってさせてて…………」
最初のうちは顔もまともに見られないくらい恥ずかしがってたけど、だんだん慣れてきて、彼女からも触れてくれるようになってきた。
自分とは髪質が全然違って面白いって何度も頭を撫でてくれたりもしたし、手の感触に集中しようとして目を閉じてる様子が気持ちよさそうに見えたのか、『わんちゃんみたい』って笑ってたりもした。
1
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる