yours-夢の罪過-

片喰 一歌

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親友転序

親友転序<13>

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「…………あ、そうだ。じゃあさじゃあさ、お風呂入れてあげよっか?♡♡」

「え!?」

 彼女の声が裏返った。
 
 たじたじになってもらう予定だったのかな。ごめんね?
 
 彼女いない歴は長いけど、相手作ってないだけだったから、免疫ばっちりついちゃってるんだよね。

 君の演技はどの子よりも可愛くて自然だったと思うけど。
 
「だって、お肌ぺたぺたしちゃってるんでしょ? お風呂入りたいのかなあと思って。疲れてるだろうから全身洗ってあげるし、上がったあとのドライヤーかけるところまで任せてよ」

 さすがに変態くさいと思われそうで言わなかったけど、本当は化粧水馴染ませてボディクリーム塗り込むところまでさせてほしい。

「……やっぱりペット扱いしてない? 私はわんちゃんでも猫ちゃんでもないって言ってるのに……」

 疑惑の眼差しに射抜かれ、新たな扉が開きそうになった。
 
 彼女にだったら踏まれるのもありかも。ボンデージスーツだって着こなせるはずだし。

「気にするとこ、そこなんだ? 一緒にお風呂入るのは別にいいの……?」

「!」

 耳に顔を近付けて訊いてみたら、彼女は一度だけ身体をびくっと大きく跳ねさせて固まった。

「ああ、ごめんね? 嫌でも嫌じゃなくても答えにくい質問だったよね」

 囁かれたほうの耳を覆ってこちらを向いた彼女は、上目遣いでこくこく頷いている。

「じゃあ、違うこと訊くね。……紗世ちゃんの予定、明日も空いてたりしないかな?」

「…………一日中空いてるよ」

 答えるまでに少し間があったのが気になるけど、可愛いピンクの唇に負けないくらい強く輝き始めた瞳は高まる期待をまるで隠せていない。

「よかったら、明日も一緒にいられないかなって思ったんだけど……どうかな? 空いてたとしても、断ってくれて全然いいんだけど。週に一度くらいは誰にも会わないでいたかったり、他に過ごしたい人がいたりするかもしれないし」

「明日も鏑木くんと一緒にいられるの?」

 彼女は『話が終わるまで待っていられない』とばかりに即答しただけでなく、小さな両手で俺の手を包んだ。

 潮風と汗によるべたつきを気にしていたとは思えないほどさらさらな手のひらに可愛すぎる挟撃を受け、耳のすぐそばで鼓動が鳴った気がした。

 数あるテクニックのひとつなのかもしれない。
 
 でも、『長年片想いし続けてる子にこんな風に言ってもらえるなら、全部が嘘でも構わない』と思ってしまう程度には俺も単純で。

「紗世ちゃんも同じ気持ちだったら。俺のこと、明日もでいさせてくれる?」
 
 勝利を確信しながら王手をかけた。
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