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親友転序
親友転序<10>
しおりを挟む「…………まあ、『話しかけても意味の通った返事が返ってこないから、余計寂しくなっちゃうだろうなあと思ってやめた』ってのが本当のところなんだけど♪」
――――『寝てる君を犯しても、満たされなかったのと同じでね』なんて、今はまだ言えない。
「そうなの? でも、その感覚はちょっとわかるかも。肯定でも否定でもいいから、なにか反応が欲しいっていうか……」
「そうそう。そんな感じ。鳴き声なんて、こっちの好きに解釈できちゃうからね。……ちなみになんだけど、紗世ちゃんは犬と猫だとどっち派?」
「どっちかなあ……。今の気分だと猫?」
小首を傾げた彼女の頭の上に某テーマパークのカチューシャが乗っていたら、可愛すぎてその日だけで何枚写真撮っちゃうかわからないな。
選択肢には入れなかったけど、俺としては大きなリボンがトレードマークのネズミの女の子のカチューシャをつけてもらいたい。
ピンクゴールドのスパンコールのやつとか絶対似合うもん。魔法の絨毯がリボンになってるのも捨てがたいけど。
「そっか♪ 参考になったよ。ありがとう♡」
ヘアアクセサリーを装着していない現実の彼女に微笑みかける。
急いで支度してくれたからか、ヘアアレンジも特にしていない。
彼女の場合、髪は軽く整えている程度ってことも多いけど、セットしてない状態も頭の形がわかって結構好きだったりする。
「参考って、なんの……!?」
彼女の瞳が縦に大きく開いた。その表情もびっくりした猫ちゃんみたい。
「秘密♡♡」
「え~? 教えてよ~!」
戯れ合う姿は、すれ違う人たちから見たら付き合いたての初々しいカップルそのものだろう。
出番の少ない猫耳のフーディーを着てもらえる日が来るのも、そう遠くない気がした。
「…………『飼えないと思ってやめた』って言ってなかったっけ?」
ふらっと入った海辺のショッピングモールには、お誂え向きにペットショップが入っていた。
仕組んでないよ。ほんとに偶然。
「言ったけど、見るだけだったらいいでしょ? ね、お願い♡」
静かに疑惑の眼差しを向けてくる彼女に負けずに、交渉を続けると――――。
「お母さんにお願いする子どもじゃないんだから……。でも、私もちっちゃい子たちに癒されたいし、私の用事に付き合ってもらったから……いいよ! 寄ってこ!!」
意外にもすんなりと承諾してもらうことができた。
手を引いてくれた力は意外にも強くて、つんのめりそうになりながらついていく俺の姿は、リードの先の元気いっぱいなペットに振り回される飼い主みたいだったかも。
――――早くベッドの上でにゃんにゃんしたいね?
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