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親友転序
親友転序<3>
しおりを挟む「確かに。でも、今言われて思ったんだけど、たぶん『It's you.』ともかかってるんじゃないかな? ……っていうのも、そもそものブランド名がさ…………」
首の後ろをぺろんと捲って見せてくれたタグには、『yours』というロゴが躍っていた。
「鏑木くんが好きなブランド、『yours』っていうんだね?」
「そうそう。フォントもお洒落だし、すっごくいい名前だと思わない? 『あなたのもの』ってさ……♡ 名前込みで好きなんだよね♡♡」
流し目の彼には、色っぽいという言葉がぴったりだ。
デートの予定があるにもかかわらず寝坊して、急いで身支度を整えているときのように、動揺と高揚で心臓が忙しい。
「そう……だね?」
投げかけられた意味深な視線の理由を考える前に、偶然か計算か、腕と腕がぶつかった。
「…………手、繋いでいい? 人通りも多いし、並んで歩いてるだけじゃ、これまでとなんにも変わんないからさ」
「言われてみれば、そうかも……! えっと、よろしくお願いします?」
はにかんで差し出した手を、彼は緩く握った。
「うん。改めてよろしく!」
身長差はそこそこあるから、彼に合わせて少し腕を上げる形にはなってしまっているけれど、きゅっと繋がれた手は、互いに吸い寄せ合うようによく馴染んだ。
――――肌を合わせるのが今から楽しみなんて、彼には悟られないようにしなければ。
「言い忘れてたけど、今日は俺のこと彼氏だと思って過ごしてね? 俺も紗世ちゃんのこと、彼女扱いさせてもらうから♪」
今にもスキップし始めそうな彼のいう『彼女扱い』とは、具体的にはどんな感じなんだろう?
「……あ、確かにそうしないと意味ないよね? しかも、そのほうが楽しそう! 恋人になったときのリハーサルみたいな」
「でしょ? そしたら、カップル限定のイベントとかにも参加できるしさ」
「あ、そっか! でも、そんな都合よく開催してるかなあ?」
「してるかもだし、イベントはなくてもカップル限定メニューが置いてあるお店は結構多いんじゃない? なかったらなかったで、ベタなことしちゃうのもいいよね」
歩幅だけでなく、できる限り視線を合わせていてくれる彼に、早くもときめきが抑えられない。
「ベタなことって、例えば?」
「飲み物シェアしたりとか?」
「私たち、好み合うもんね?」
「それもあるし、人生で一回くらいは彼女とハートのストローで可愛い色のジュース飲んでみたいじゃん……!」
と彼は熱っぽく訴える。恋人との過ごし方には一家言ありそうだ。
「ハートのストローって! 確かに定番っぽいけど、今時あるかなあ?」
思わず吹き出すと、つられて彼も破顔した。
「ないと思って油断してない? あったら絶対付き合ってもらうからね?」
「いいよ。……ていうか、そのくらい何回でも付き合うし……」
「ほんと? 約束ね?」
陽の光の下で見る双眸はより美しくて、その願いを叶えてあげたいと強く思った。
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