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最悪の目覚め
最悪の目覚め<17>
しおりを挟む「んー……」
「違う? ……じゃあ、さっきキスしたくなっちゃったみたいに、エッチしたくなっちゃって……。鏑木くんに無理言って抱いてもらった…………とか?」
言い淀む俺とは正反対に、彼女は言葉を重ねていった。
……この子、俺のこと信じてくれてるわりに、自分のことは全然信じてないんだな……。
彼氏の有無にかかわらず他の男とも気軽に関係を持つ彼女のことはずっと不可解に思ってたし、はっきり言って苛立ってもいたけど、彼女は彼女ですごく悩んでたのかもしれない。
まあ、考えてみれば当然か。
男女で背負うリスクの高さがあまりにも違いすぎるし、遊びたくて遊んでるわけじゃないんだろうね。
それはそれとして、好きな女の子の声で聞く『エッチ』って単語の破壊力が凄まじくて、今はちょっとそれどころじゃなかったりして。
俺個人としては、もっと恥じらってくれたほうが好みだけど、あっけらかんとしてるほうが君らしいか。
「…………もしそれが当たりだったら?」
想像なんてしたくもないけど、すぐにその可能性に思い至るってことは、前にもそういうことがあったのかもしれない。
「すごく申し訳ないと思うし、全部の辻褄が合う……気がする…………」
『どうするつもりか』聞いたつもりだったんだけど、『どう思うか』答えた彼女は、そのまましょぼんと俯いてしまった。
「お願いとか、聞いてくれたりする?」
「もちろん! 私にできることなら、なんでも!」
話が進まないと思って冗談交じりに言ったら、彼女はものすごい勢いで顔を上げた。
韓国アイドルばりに髪の毛が連動して動く。もしかしてダンス経験あった?
…………じゃなくて。今、『なんでもお願い聞いてくれる』って言った?
「……なんでも?」
「うん、なんでも言っていいよ!」
あーあ……。
勢いで言っちゃったのかと思って確認してあげたのに、あれだけ厳重に隠してたノーブラの胸ガードするのも忘れて、力強く肯定してくれちゃってさ。
ねえ、本当にそんなこと言って大丈夫?
君の中で俺はまだ『親切で優しい鏑木くん』のままだろうから、仕方ないっちゃ仕方ないのかもしれないけど、あんまり安請け合いしないほうがいいよ?
相手は君に何年も片想いしてる悪い男なんだから。
――――ってことで。その勘違いと良心、ありがたく利用させてもらうね?
「ならさ、『責任取って、付き合ってほしい』……とかっていうのは、あり?」
「え……っ?」
こんな交渉材料、利用しない手はないでしょ。
事情を話したあと、証拠映像を観てもらって反応を楽しむつもりだったけど、予定変更だ。
そんなことは付き合ってからだってできる。
――――順番は逆になっちゃったけど、君の心も手に入れてみせるから、少しの嘘は大目に見てね?
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