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最悪の目覚め
最悪の目覚め<12>
しおりを挟む<紗世side>
鏑木くんって、ほんと綺麗な瞳してるなあ……。虹彩が明るいから、おいしそうに見えて困っちゃう。
前まではブランデーみたいな色だと思っていたけど、最近はアイスティーの入ったグラスを眺めていても、彼の顔が浮かぶようになってきた。
…………って、見惚れてる場合じゃなかった!
謎ってなんのことだろう?
鏑木くんのお父さんお母さんのお話は楽しかったけど、そもそもなんでそんな話題になったんだっけ?
「紗世ちゃんはさ、『昨日、なにがあったか』を思い出したいんだよね?」
思考と一緒に、まばたき以外の動きを止めてしまっていたら、右隣から声がかけられた。
やっぱり優しい……。
口調や言い方もだけど、声自体が優しくて、色にしたら絶対オーロラピンクとかベビーピンクとかになると思う。
そんな彼が、今貸してくれているメタリックレインボーのようなギラギラした派手な色使いのファッションを好んでいるというのは、だいぶ意外だった。
「あ……! そう! そうだったね!」
「思い出した?」
吐息で笑う彼はいつも以上に余裕があった。このひとの彼女はさぞ幸せなことだろう。
私の彼氏やセフレたちだったら、苛立って声を荒らげていたに違いない。
……彼氏とは別れたし、セフレとも最近会ってないけど。
こんなことを考えてしまうのは、自覚していなかっただけで、前から彼のことが気になっていたせい?
見つめられてそわそわしてしまったのは、彼がとても美しいひとだから?
――――そのどちらも微妙に違う気がした。
「昨日のことはまだ……だけど」
誤魔化すように答えたけれど、記憶を失っている不安とも彼に感じているときめきとも別種の違和感が拭えない。
なんというか、あるべき支えを失って落ち着かない感じ……。
それに加えて、少なからず解放感もあるのがまた奇妙で、原因を突き止めたいのに、寝起きの頭は当分、回転を始めてはくれなさそうだ。
「鏑木くんは、私が昨日のことを思い出すためのヒントを出してくれたんだったよね?」
「そうそう」
「でも、これが特大ヒントってどういうこ…………!!」
自分では絶対に選ぶことのない派手なパーカーに視線を落として、ようやく違和感の原因に気付いた。
普段よりボリュームのないバスト。
オーバーサイズであるがゆえに、乳首の所在がわからないのがせめてもの救いといったところか。
――――今の私は、いわゆるノーブラらしかった。
人と会うときじゃなくても上下セットの下着を着けているからそこは心配ないけど、今日はやたら気合いの入ったエッチな下着を着けてきていた気がする。
飲み会のあとに約束があったわけではない。それ以外の選択肢がなかったのだ。
平日に洗濯機を回すのを億劫がっていたツケをここで払う羽目になるなんて。
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