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最悪の目覚め
最悪の目覚め<11>
しおりを挟む「そうそう。大好きだよ?」
どさくさに紛れて好意を伝えたけど、彼女は気付かなかったみたいで、にこっと笑っただけ。
「あれ? じゃあ、お母さんは?」
俺の家族より俺に興味持ってほしいけど、もっともな疑問だ。
いずれ会ってもらうときのためにも、ある程度は知っておいてもらったほうがいいか。
「母さんもそんな感じで、キャミもショーパンも普通に着てるね。若い頃から趣味が変わってない者同士、並んでも違和感なくてちょうどいいのかも。色使いは……そうだな、父さんに比べれば落ち着いてるかな?」
脳内に浮かべた両親のビジュアルは、下手すれば二十年近く変わっていない気がした。
もちろん死別しているなんて重すぎるオチがつくわけはなくて、ただただ二人が若さを保ってるってだけ。
服の趣味だけじゃなく異性の趣味もまったく変わらないっていうんだから、本当に平和なもんだよ。
「すごいね、鏑木家! 見た目もセンスも若々しいご両親って、すごく素敵! 憧れちゃうなあ……」
他人事みたいに言ってるけど、俺は君も一族に加える気でいるからね?
「本当に若いと思うよ、二人とも」
「『趣味が変わらない』って言い換えれば『一途』ってことでしょ? きっと今でもすごく仲良しなんじゃない? ……いいなあ、一途なひと……」
――――『君の隣にものすごく一途な男がいるんだけど、見えてない?』とか。
――――『君が俺のことを好きになってくれるだけで永遠の愛が簡単に手に入るんだけど』とか。
「紗世ちゃんの言ってくれたとおり、いつまでもラブラブなのは羨ましいかも。今とか二人でネス湖行ってるよ。ネッシー探すんだってさ」
言いたいことは山ほどあったけど、こんな流れで言うのも癪だから、ぐっと堪えて、喉を強行突破してきそうだったそれをお腹の底まで押し返した。
以心伝心したみたいで嬉しかったのと、何でも前向きに解釈できる彼女をもっともっと愛おしく感じたこともあって。
「懐かしいね! 久しぶりに聞いたかも」
「俺も。『いたら写真送ってよ』って言っといたから、二人とも一張羅着てったんじゃないかな? 見つからなくても写真は送ってくるだろうから、届いたら紗世ちゃんにも見せてあげるね」
「楽しみ! 鏑木くんとお話ししてると、楽しくて時間忘れちゃうね?」
「そう? 嬉しいな。…………ちなみに、謎は解けそう?」
「謎?」
ぶかぶかのメタリックレインボーに身を包んだ彼女が大きく首を傾げた。
……あ、これ完全に忘れてるな。
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