yours-夢の罪過-

片喰 一歌

文字の大きさ
上 下
11 / 246
最悪の目覚め

最悪の目覚め<11>

しおりを挟む

「そうそう。大好きだよ?」

 どさくさに紛れて好意を伝えたけど、彼女は気付かなかったみたいで、にこっと笑っただけ。

「あれ? じゃあ、お母さんは?」

 俺の家族より俺に興味持ってほしいけど、もっともな疑問だ。

 のためにも、ある程度は知っておいてもらったほうがいいか。

「母さんもそんな感じで、キャミもショーパンも普通に着てるね。若い頃から趣味が変わってない者同士、並んでも違和感なくてちょうどいいのかも。色使いは……そうだな、父さんに比べれば落ち着いてるかな?」

 脳内に浮かべた両親のビジュアルは、下手すれば二十年近く変わっていない気がした。

 もちろん死別しているなんて重すぎるオチがつくわけはなくて、ただただ二人が若さを保ってるってだけ。

 服の趣味だけじゃなく異性の趣味もまったく変わらないっていうんだから、本当に平和なもんだよ。

「すごいね、鏑木家! 見た目もセンスも若々しいご両親って、すごく素敵! 憧れちゃうなあ……」

 他人事みたいに言ってるけど、俺は君も一族に加える気でいるからね?

「本当に若いと思うよ、二人とも」

「『趣味が変わらない』って言い換えれば『一途』ってことでしょ? きっと今でもすごく仲良しなんじゃない? ……いいなあ、一途なひと……」

 ――――『君の隣にものすごく一途な男がいるんだけど、見えてない?』とか。

 ――――『君が俺のことを好きになってくれるだけで永遠の愛が簡単に手に入るんだけど』とか。

「紗世ちゃんの言ってくれたとおり、いつまでもラブラブアツアツなのは羨ましいかも。今とか二人でネス湖行ってるよ。ネッシー探すんだってさ」

 言いたいことは山ほどあったけど、こんな流れで言うのも癪だから、ぐっと堪えて、喉を強行突破してきそうだったそれをお腹の底まで押し返した。

 以心伝心したみたいで嬉しかったのと、何でも前向きに解釈できる彼女をもっともっと愛おしく感じたこともあって。

「懐かしいね! 久しぶりに聞いたかも」

「俺も。『いたら写真送ってよ』って言っといたから、二人とも一張羅着てったんじゃないかな? 見つからなくても写真は送ってくるだろうから、届いたら紗世ちゃんにも見せてあげるね」

「楽しみ! 鏑木くんとお話ししてると、楽しくて時間忘れちゃうね?」

「そう? 嬉しいな。…………ちなみに、は解けそう?」

「謎?」

 ぶかぶかのメタリックレインボーに身を包んだ彼女が大きく首を傾げた。

 ……あ、これ完全に忘れてるな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...