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最悪の目覚め
最悪の目覚め<6>
しおりを挟む「いただきます」
視線の先の彼女は思い出したように蓋を開け、すんなりしたフォルムのペットボトルを口元に持っていった。
悪く言えば寸胴のそれは、彼女のスタイルとは正反対といってもいい。服の上から見た感じで予想はついてたけど、期待以上だったよね。
「どうぞ」
小さいお口は、飲み口にキスするみたいにとんがってる。
いいなあ。俺とそこ代わってくれない?
……って、ペットボトルに言ってもな。
え? キスなんて子どものから大人のまで何回もしてるけど、寝てたら反応返ってこないでしょ。
今度は意識あるときにしたいな、って話。
「ごちそうさまでした」
「いい飲みっぷりだったね。……でも、お酒には負けるかな? 昨日の紗世ちゃん、すごかったもん」
今のはここに連れ帰る前の飲み会の席でのことだけど、後半はお察しの通りダブルミーニング。
「すごい呑兵衛みたいじゃん、私…………!」
色んな意味ですごかった彼女は、恥ずかしそうに空のペットボトルをぶんぶん振って弁明している。
もっと恥ずかしい姿も見られちゃってるのにね。
「あれ、違った?」
すっとぼけて、わざとらしく首を傾げると――――。
「違わないけど、今のは喉渇いてただけ!」
あらら。顔覆っちゃった。
元からちっちゃいのに、さらにコンパクトになっちゃって。
「そっかそっか。ごめんね。でも、俺は幸せそうに飲んでる紗世ちゃん、すっごく可愛いと思うけど」
「え?」
突然『可愛い』と言われて、戸惑っているのか、怒る気も失せてしまったのか。
彼女はゆっくりと顔を上げた。
クールダウンしたはずのほっぺがまた少し色付き出したように見えるのは、自惚れかな。
「まだ喉渇いてたら、アイスティーも淹れよっか? 最近凝ってるって言ってなかった?」
聞き返すための一音を聞こえなかったふりして、ぱっと話を逸らす。
「そうそう。ずっとホットが好きだったんだけどね、こないだ入ったお店がアイスティー推しだったから、そっち頼んでみたの。そしたら本当においしくて、びっくりしちゃって。おうちでもこれ飲みたいなあって思って、研究し始めたの。茶葉もいちばんたくさん入ってるの買ったし、店長さんにコツも聞いてね……!」
「そっか。紗世ちゃんって頑張り屋さんだよね。お店の味には近付いてきた?」
「まだ全然。だけど、最初のときよりはちゃんとおいしくなってきてると思う!」
拳をぎゅっと握って熱弁を振るう彼女は、いつもよりほんの少し早口だ。
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