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最悪の目覚め
最悪の目覚め<5>
しおりを挟む「ほっぺ熱い?」
「ほっぺもだけど、全身熱いかも……」
ぽわんとした表情は、まだ夢の中にいるみたい。
ある意味それも間違っちゃいないか。
記憶を取り戻して――俺たちの間に一体何が起きたのか――知るまで、君は眠り姫のようなもの。
ペットボトルの向こうのほっぺは、まだ薔薇色のまま。
――――抱いてるときは、全身こんなような色してたっけ。
いや、ここまでガッツリ赤くはなかったか。
でも、肌めちゃくちゃ白いから、特別感あって余計エロかったな。
「そっか。紗世ちゃん、結構飲んでたもんね……。頭痛いって言ってたけど、吐き気はない?」
体温が上がってるのは、お酒のせいじゃないと思うけど、口には出さない。
心配しているように見せたくて眉を寄せたけど、俺が脳内で描いているのは彼女の飲みっぷりじゃなくて乱れっぷりだった。
もう一回見たいな……。まあ、いつでも何回でも観れるんだけどね?
「大丈夫。もし吐き気出てきたら、急いでここ離れるから!」
俺が何を考えているかなんて知らない彼女は、自分のことより俺の家の心配をしている。
優しくて気遣いのできるいい子……なんだけど、ちょっと他人行儀すぎるような気がしなくもない。
きっと、君にとって俺が迷惑をかけていい存在じゃないからだよね。
――――待ってなよ。今すぐにでもその地位まで上り詰めてあげるから。
「え? 全然そんなの気にしなくていいのに。汚しても洗えばいいだけだし、紗世ちゃんは自分の体調の心配だけしててよ」
――――そう。言葉通りにも捉えられるけど、数時間前の記憶を思い出して綴った台詞には、別の意味も込められていたりする。
いかにも如何わしいムーディーなピンク色した脳内はもちろん、黒一色の腹の中も一切悟らせないように白い歯を見せた。
『気のいい男友達』の仮面、装着完了。なんちゃって。
「鏑木くんって、ほんと優しいよね」
彼女はやっぱり、言葉の裏に隠された本当の意味にも気付かずに、感激さえしているみたいだった。
「そうかな? このくらい普通だよ」
損なだけの役回りを、俺は何年演じ続けているのか。
容姿や声にも自信はあるし、本当に俳優でも目指せばよかったのかも。
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