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第1幕『半人半蛇(蛇人間)』【裏】
第50話『ギュッとして!Good』
しおりを挟む「そ……っ、んなことでいいの?」
一瞬だけ裏返った声を聞いて、にまにまとした笑いが口角を押し上げた。今のあたし、口裂け女ばりににっこりしてる自信ある。今風に言うと、『口角天井に突き刺さったわ』だっけ?
(あたしだってそんなとこ日常的に触んないし、触られることもあんまないもん♡ 髪は一応、まとめられるくらいの長さはあるけど、くくったことなさそ~♡♡ ……ってことは、髪くくる機会がある人よりさらに弱いはず♡ 覚えてたらまたあとで攻めちゃおーっと♡♡)
「…………って僕が言うのも変かもね。こんな簡単なことなのに、グミちゃんからしてもらうばっかりだった……。こんな気が利かない男でも、好きでいてくれる?」
縋るような目をしているが、捨てられた犬猫と同列の弱者感は皆無だ。白夜は確信している。あたしが彼を嫌うことなど出来ないということを。
今の彼には自信がある。本人は半分くらい自覚していないかもしれないが、彼はあたしが与えてきた自信をしっかり自分のものにしていた。その証拠に、背中に触れている手が、腕が――ベストポジションを探り始めている。
「気利かないなんてことないから、自信持って♡ さっき飛び込んでったとき、あたしが痛くないようにしてくれたって知ってるし、聞ける範囲で全部のお願い叶えてくれようとしてくれるの嬉しい♡♡ てか、それ言うなら、あたしこそ要求多くて申し訳ないっていうか……。結構無理言っちゃってるのはわかるんだぁ……」
「無理なこと? グミちゃんには一度も言われてないよ。会ってから今まで、嬉しいことしか言われてない。全部、『白夜が好き』に繋がる言葉だった…………」
白夜は左手を肩に掛けて右手で腰を抱き、あたしを自分のほうに引き寄せた。
(来……、た来た来たぁぁぁあ♡♡♡ これこれ、あたしが欲しかったの♡♡ ずっと待ってた~♡♡ 骨がゴリゴリ当たって痛いのに、幸せすぎて骨当たってるとこじゃなくて胸が痛い感覚……♡ もうダメ……。ダメじゃないけどダメ、好きすぎてつらみざわなんだけど♡♡)
抱き締められているというよりも締め上げられているようなハグからは、少しでも蛇ちゃんに巻き付かれた感覚に近付けてくれようとする彼の優しさが存分に感じられた。
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